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羽那陀(禮晶)完
拾玖
「…羽那陀はどうなるのですか……?」
『安心しろ。蘇生させたらお前の所に行かせる』
良かった、でも千年後とか言われたらどうしよう。人間なので確実に土の中だ。いや、土そのもの。
應の考えを見抜いたらしい御先祖様は笑った。
『ちゃんとお前が生きている内だ。三年位かな?』
「色々と有り難うございます、御先祖様。」
『こいつに礼は無用だ。すぐ調子に乗るからな。』
『水蛇、うるさいぞ。』
『事実を言って何が悪い。』
「………。」
應はぷっと噴き出した。今まで御先祖様はもっと威厳があって温かみ皆無な御仁だと思っていた。
……そう、良くも悪くも伯父の様に。
伯父は公平な目で見れば暴君や昏君の類ではない。
寧ろ賢君とか名君の部類に入れるだろう。父母を理不尽に殺した事を許すつもりなど無いが、
「……まぁ、もう良いか。」
そんな風に思える自分が確かにいる。
憎み続ける事に飽きた、と言えば聞こえは良いが、面倒臭くなって来たというのもまた、本音だろう。
「大嫌いは撤回します、御先祖様。」
今だって嫌いだけど、虫が好かない位に。
『それで良いさ。それが一番良い…』
朝日に溶かされて行く霜の様に御先祖様達の姿が次第に薄くなり、見えなくなって行く。
應はいつまでもそれを見送った。

『そうだ、国の東端に翔鳳峰という山があって、ちょっとした邸と畑があるからお前にやるよ。』
(仙人になりたいとは言ってないけどなぁ……)
杜●春を思い出した應であった。



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