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羽那陀(禮晶)完
拾肆
一方、神仙の世界。
「水蛇、帰って来たら絶対やるからさ、」
「駄目だ。ちゃんと約束は守れ。」
書類の山々もかなり減っていたが後五つ程ある。これでは事態が急変しても間に合いそうにない。
「………。」
「お前が上目づかいしても気色悪いだけだぞ。」
面と向かって気色悪いと言われて落ち込んでいる縹が流石に可哀想になった水蛇は溜め息をついた。
どうやら甘やかし癖がついてしまっているらしい。
「じゃ、山一つ分だけ手伝ってやる。残りはやれ」
「え、どうせなら山三つにしてくれよ。」
「駄目だ。四つ。」
「じゃぁ三つと六割九分九厘。」
「……三つと七割。それ以上は絶対駄目だ。」
何だか競りか値切り交渉の様になって来ている。
どちらも譲らず、膠着状態のまま時が流れた。
「……と言うかさっさとやろう。」
「そうだな。」
静かな室内に筆を走らせる音だけが響いている。
「水妖に憑依された奴、最近どうだ?」
「一応監視しているがそろそろ危ないだろうな…」
髪が白を通り越して次第に透け始めているという。
縹は苦いものを感じながらぽつりと呟いた。
「残り時間は後僅か、という事か。」
「一緒にいるお前の子孫も気付いている様だぞ?」
應という名の少年を思い起こして水蛇は言った。
彼は結構縹に似ている。顔以外にも性格とか。
「お前の子孫の割には出来が良いな。」
「違うな。俺の子孫だからこそ、だ」
自慢げな縹に水蛇は意地悪くにやりと笑った。
「成程…、要するに遺伝子の突然変異とやらか?妙な遺伝子が変異したからこその結果だな。」
「………酷っ。」
「ふん。事実だろうが」

結局、水蛇が書類の山を半分片づけたのだった。


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あきゅろす。
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