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羽那陀(禮晶)完

一方、人界。
その後も何度か羽那陀の言葉で出所が不明な水が現れ、應と首を傾げる羽目になった。
「あれ?」
いつだったかの時と同じ様に應にまじまじと顔を見つめられてたじろぎながら羽那陀は聞き返した。
「な、何だ」
「羽那陀って、目が茶色だったっけ?」
「いや、黒だった筈だが?」
髪の色が白銀に変わってしまった過去があるから何となく疑問形の返答になる羽那陀である。
「お前の目、今は黒と言うよりは濃い茶色だぞ?」
あれ、とか言いながら應は彼女の髪を一筋つまみ輿の窓から差し込んで来る陽の光にかざした。
…彼は自分を女だとは認識していないらしい、と諦めの境地に達してしまった羽那陀である。
「髪も今は白銀から完璧な白に近づいてるぞ?」
「………!」
やはり、数日前に感じた違和感は真実だった様だ。
そう話すと應は呑気に言った。
「良くないか?色白の方がもてるって言うしさ。」
「そうは言うが……」
「まぁ、そんなに気にする事でも無いだろう」
実害がある訳でも無いし、と言う應に頷きつつも羽那陀は奇妙な不安を感じてならなかった。
次第に色の消えていく自分の身体。
それは羽那陀という存在をも消えていく兆候にも思えて奇妙な不安を孕んでいた…

「ところで、髪を余り抜かないでくれるか?」
「………。すまん。」


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