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蛟竜(禮晶)完

それからしばらくは穏やかな日々が続いた。
……まぁ、竜がコウを男と思っていた事が判明したが。

そして、共に生活している間にコウが竜に下した結論は九割方、竜皇子と見て良いだろうという事だった。
「格好からして男だろう、それ」
「格好で人を判断するな。良い帝にはなれぬぞ。」
「それは正論だが……」
まだショックが抜けきらないらしい。
「なぁ、竜。」
「何だ?」
「どうして宮中に戻りたいのだ?」
しばらく生活を共にしている間中、竜を見ていてコウはずっとそれが気になっていた。
彼にとって宮中暮らしより市井で穏やかに生きる方が余程良さそうなものなのだが。
もっとも、コウは別に他人の願いに口を挟むつもりなど毛頭無かった。
ただ、前から彼に聞いてみたかっただけなのである。
しばしの間、二人の間に沈黙が落ちた。
やがて、先に口を開いたのは竜の方だった。
「……仇討ちだ。」
あぁ、成程、とコウは呟いた。成程と思うだけで別に何の感慨も無い。協力しがいはありそうだが。
「廉(レン)親王に、か。」
廉というのが現帝の異母弟の名だ。第一皇子たる竜が復讐しようと思うのはまず彼くらいだろう。
噂はどうやら本当に事実であったらしい。
竜は淡々とした口調で話しだした。
「気の毒な程に金と権力に目が無い愚劣な奴だ。己と、我が子に帝位を…それしか脳味噌にない。」
「その我が子というのが…」
「私の従兄弟の葉(ヨウ)だ。」
竜がいない今、葉は唯一の帝位継承者である。
「母上は私を市井に逃がした直後に殺された。」
彼の母はせめて息子だけは生き延びて欲しいとまだ幼かった竜を市井へと逃がしたのだという。
「帝位など欲しくない。市井の方がずっと良い。そんなに欲しいのならいつでもくれてやるが…母上を殺した事だけは許さない。」
「そうか。」


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あきゅろす。
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