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蛟竜(禮晶)完

一方、神仙の世界・鏡池。
水蛇は縹の突発的来訪に怒る気力も萎え果ててその日は非常な寛容さを以て親友を迎え入れた。
この親友は百万回以上先触れをしろと言っても馬の耳に念仏、柳に風、糠に釘、暖簾に腕押しと受け流すのだ。
「お前なぁ、天帝の業務はどうした。」
天帝……神仙の世界の最高権力者。
縹のその地位を、コウはまだ知らない。   
「サボってはいないから安心しろ」
安心?出来るか大馬鹿野郎、と突っ込みたいのを抑えて水蛇は己の娘の話題を振ってみた。
「お前と違って素直で出来の良い子だよ。」
水蛇はこの天帝を何で殴るべきか真剣に考えた。
拳では気が済むまい。麺打ち棒とか、鍋とか。
実際は苦すぎるお茶を煎れる程度で留めたのは水蛇のささやかすぎる優しさである。
「あの子を人間の都に向かわせたのは何故だ?」
「ん?面白そうだから。」
「……あの子の存在が何か影響を及ぼす、と?」
「そういう事だ。」
鏡池の水面にはあらゆる世界の事象が映る。
人界の様子を二人して眺めながら縹は何気なく出された淹れ立てのお茶を一口啜って硬直した。
直後、縹からこの世の終わりの様な呟きが漏れた。その表情が台詞の全てを物語っている。
「……………………苦い。」
「当たり前だ。腐る程薬草を入れた特製薬用茶だからな」
得意げに言う水蛇に、縹は呻いた。
そうだ、奴が味音痴だというのは有名な話であったではないか。
「こんなの客に出すなこの超絶味音痴野郎……」
「お客には結構評判なのだがな。」

薬効ではなく、勿論苦さで、だ。


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あきゅろす。
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