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蛟竜(禮晶)完
拾玖
「地の帝よ。」
思ったより若い声だ。舜は玉座から転げ落ちると慌てて三拝九拝をして地に平伏した。
「必要ならば、助けよう。新たな帝の選定を。」
「光栄至極に存じ上げ奉ります、天帝陛下」
「では、帝の候補を出すが良い。」
竜と葉は、というより竜は恐る恐る前へと出た。
葉の方は年甲斐も無く泣き喚いているばかりで、とうとう前に出ようとはしなかったのである。
「面を上げよ。」
竜は廉の二の舞を恐れてすぐに顔をあげる事は躊躇していた。天帝は重ねて声をかけた。
「先程の下卑た輩の様に眼を潰したりなどせぬ。さぁ、早う面を上げるが良い。」
コウは眉間に皺が寄るのを抑えきれなかった。
どうにもこうにも天帝の声に聞いた覚えがある。
その時、天帝が竜に問うた。
爆弾投下一秒前。

「そなた、その白銀の髪の女子を娶るか?」

竜もコウも固まってしまった。いきなり何なのだ。と言うか娶るって…お互いに有り得ない。
「ただの戯れ言だ。真に受けるな。」
だったら言うなよ、というコウの胸中突っ込みは天空におわす天帝陛下には届かなかったらしい。
「ただ、その女子は我が養い子故、な」
「…は?え、と言うかやっぱり、」
次の瞬間天帝の口調が一変した。
「久し振りだな、コウ。都まで迷わなかったか?」
「お、お師匠様っ?」
「養い子だといつも言っているだろうが。」
まさかの師匠=天帝陛下の図式にコウが茫然と固まっていると、
「…おい、さっさと帝を決めなくて良いのか、縹。」
不意に青年の姿をした神がもう一人来臨した。
天帝を呼び捨てとはかなり高位の神仙らしいし、白銀の髪に紅い眼で、何処となくコウに似ている
そう思った竜は恐る恐る尋ねてみた。
「無礼を承知の上お尋ね申し上げます。貴方様は一体いずれの神仙におわしますか?」
何故か天帝陛下が答えてくれた。良いのだろうか。
「彼は水蛇という。コウの実父だ。」
「何故お前が紹介する。で?帝は決めたのか?」
あぁ、と呟くと縹は重々しい口調に戻った。

「私は次の桓ノ国の帝に竜、そなたを推す。」


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