蛟竜(禮晶)完 拾漆 条は奇妙なほどに静かな声で言った。 「私は葉殿下の兇手で貴方の監視役でしたから。私の名前からしてそうでしょう?」 「…条……そうか、枝か……。」 条という字には元々、枝という意味があるのだ。 葉が生い茂るのを支える枝……… 「葉を支えるのが枝の役目です。……お覚悟を。」 今まで竜が生かされていたのは、この神剣の儀で竜皇子の名を騙った大罪人として、より効果的に処刑する為だったのだと条は言った。 だから、舜の夢告げの話は都合良く竜を宮中へと呼び戻せる代物であったと言う。 今までにあった暗殺未遂や嫌がらせは全て演技だったのだとも。 これまでずっと信頼していた条の裏切りを受け、竜はがっくりと石畳に膝をついてしまった。 「早く偽者を処刑しろ!」 廉が叫び条は改めて長剣を大上段に振り上げた。 刃が午後の光を受けて鈍く、不吉に煌めいている。 「やめろっ!」 コウは駆け出したが間に合う筈が無い。 そして、 世界から、全ての色が消えた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |