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蛟竜(禮晶)完
拾肆
数日後。
いつになく竜がご機嫌で宮に帰って来た。
「一体何があった。気味悪いぞ。」
「気味悪って、コウ、それ結構傷付くのが……」
竜は反論するが綺麗さっぱり無視された。
「で、何があったのだ?」
「葉に恥をかかせて来た。」
「恥?」
竜曰く帝に葉と共に学問の進み具合を尋ねられて、葉の鼻っ柱を叩き折って来たという事らしい。
「返答に窮した時のあいつのあの顔ときたら……。コウにも是非見せたかったぞ。」
「私は目が見えないからな。残念だが。」
「…すまん。」
「別に。構うな。」
コウはこの宮中において“異形”の存在だった。
生まれついての白銀の髪は宮中で一際目立つ上に、盲目であったから尚更だった。
「それと、神剣の儀の日取りが決まった」
神剣の儀…帝の後継者を決める儀の事である。
王家至宝の神剣を、要するに太白剣を抜いた者が天帝から天命を授けられた帝であるという物だ。
天命無き者には太白剣は抜けないのだと言う。
数代前には神剣の儀に際して天帝陛下御自らが来臨なされた事もあったと記録には残っているが…
「天帝陛下はどちらをお選びになるかな?」
「さぁ……帝位は欲しくはないが貰わねばならぬ。 母上の死の真相を暴く為の権力の座だ。」
「そうだな」
その時、条が帰って来た。
竜は得意げに葉の鼻を明かした事を話し始めた。

「あんな阿呆に帝位は似合わんだろうに。」

条は何も言わなかった。
困った様な、面白がっている様な表情をしていた。


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あきゅろす。
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