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蛟竜(禮晶)完

宮中は呆れる程広くてきらびやかな場所だった。
これまで誰も立ち入らなかった筈の第一皇子の宮殿が塵や埃一つ無く綺麗に掃除されている。
大変だっただろうな、とコウは掃除係に同情した。
竜が帝との謁見中の事だった。
女官達がコウに着替えを持って来てくれたのだ。
そこまでは有り難かったのだが彼女にとっては着方ですら未知の世界のきらびやかな衣である。
縹と翔鳳峰に住んでいた頃はいつも動きやすい男物を着ていたし、どうせ見る事も出来ないので晴れの日などに着飾る事などもしなかったのだ。
…………まぁ、そのせいで竜に男と間違われたのだが。
何とか着終えたが、その後も髪型やら化粧やらで全ての支度が終わる頃はコウも疲れきっていた。

数刻後。

竜が自室に戻ると見た事の無い美少女がいた。
白銀の髪。
いや、まさか………
「え、嘘…まさかコウ?」
「そのまさかだが。」
服装一つでこうも印象が変わる奴も中々珍しい。
今の彼女は文句無しに清楚で可憐な美少女である。
「お前、驚きすぎだ。」
「いや驚くだろこれは」
竜はコウが盲目の事を今更ながら残念に思った。
「そう言えば、竜。」
「何だ?」
「何故呼び戻されたか分かったか?」
「あぁ、何でも父上が夢告げを受けたらしいな。」
「夢告げ?」
「天帝陛下よりのお告げがあったらしい。」
竜の父、現帝の舜(シュン)は良く言えば信心深いものの、悪く言えば迷信深いとでも言うべき人物で…まぁ、そう言う経緯で呼び戻されたらしい。
それを聞いたコウは呆れかえった。
「何者かの幻術だったらどうするのだ。」
「確かに。度が過ぎるのも危ないものだな。」


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あきゅろす。
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