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秒針の嘲笑(消火器)完
あとがき
突然ですが、書き上げた今丁度思ったことが、おそらく自分は一種の「恐怖」を描きたかったのではないだろうか、ということです。
ルネ・マグリットという画家をご存知でしょうか。二十世紀前半の、超現実主義=シュルレアリスムの画家で、私の最も好きな画家です。(興味を持たれた方は、目の前の箱…じゃない、ググるなり何なりなさってみて下さい。『大家族』『光の帝国』など、幾らか代表作の画像が見られるかと思います。)
私は元々、此の方の描く、まさしく「超・現実」な世界、つまり現実を超えた空想のようで、本質は現実を的確に表した絵に、何処か恐ろしいような印象を持っていました。そして、それが何なのかを考えるうち、それを解明し、その再現を試みてみたいという気持ちになったのでした。(どれだけ無謀なんだ自分!)
でも好きなものは解明したかったんです。人間は欲の生物なんです。…多分。
取り敢えず紙面も限られています故、色々と細かいことは省きます。が、結局マグリットの絵の持つ恐怖というのは何かというと、それは「時間軸の現在という一点を切り取った其処にただ存在する理由無き現象を解明出来ない恐ろしさ」ではないかという結論に至った訳です。
科学的に百パーセント存在し得ないというのに、それでも、もしかしたら日常のさり気無い何かの拍子にひょいと見てしまうかもしれない。電車でうたた寝をしている時に、落としたペンを拾おうと机の下を覗いた時に、ぼうっと道を歩いている時に、「もしも」も何も有り得ないのに、意識下に見えてしまうかもしれない。そういう光景の起こる過程を説明出来ないことが、「対象を掌握出来ない」とでも云うべき或る種の恐怖を生んでいるのではないかと思うのです。
そこで、その種類の恐怖の再現を考えたとき、決して有り得ないかつ最も説明のつけようのない現象として、私は「時間を歪める」ことを選んだのでした。
最後の頁迄お読みになった方はお気付きかと思われます。私はあとがきやらコメントやらといったものでやたらと解説をこじつけるのは大嫌いなので(直訳―「解説必要になるようなもの書くな、本文で全部語れ」)、敢えて物語の正体を此処に明かすことはしません。しかし、「こういう光景が平然と存在する恐怖」を表現してみたかった、ということだけは事実として述べておきます。
個人的には、後半は書いていて異様に楽しかったです。本当は何かしらおっさんの話とか書いてみたいなーとか何とかいう妙な目的で始めたからとかいう経緯はあまり語らないほうが良いのでしょうか。
最後になりましたが、拙文をお読み下さり、まことに有難うございました。また何処かでお会い出来ますよう!

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