妖(和麻)完 ページ:8 明くる日、勇人は昨夜のことをこう言っていた。 「ああ、あれは俺の最終奥義なんだ。なんか目を閉じて精神集中させると不思議と何でもできるようになる……と俺は思っている」 勇人は自分がどれ程信じられないことをしたのかを分かっていない。そのため天花に強く言い寄られて自信なさげに答える。 「じゃあ、変なことを聞くが勇人に両親はいるのか」 「…………いるんじゃないのかな。正直に言ってよく知らない。物心ついた時からじいちゃんの家にいたしな。どうしてそんなことを聞くんだ?」 「いや、気にしなくていい。少し気になってな」 そう言ったきり天花は勇人に話しかけなくなった。 それから勇人は天花の質問が頭から離れなかった。 「両親はいるのか」 この問いに何を言っているんだと笑い飛ばせなかった自分に驚いていた。しかし勇人は両親の顔を見たことがなかった。勇人が小さいころ喜作はとある事情によって勇人は両親と離れて暮らしていると説明した。今までその説明を疑って喜作に幾度か問うたことがあったが毎回「いずれ分かる」と答えるだけで喜作は一切教えなかった。いまだ勇人はその “とある事情”を聞かされていない。 喜作の言う「いずれ」はもうすぐそばに来ていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |