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妖(和麻)完
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 あれから天花は攻撃される一方だった。体のあちこちに切り傷ができて見るも痛々しい姿になっていた。踏ん張って立ち上がろうとするががくりとしゃがみこんでしまう。動けなくなった天花を見てこれ幸いと雷が止めを刺しにくる。
(情けねえな、俺)
自分自身に呆れてただ迫りくる爪を見た。が、その爪は天花の鼻の先でピタリと止まる。
「久遠?」
「違う。あれは」
勇人だった。しかし、とてつもなく強い妖力を纏っている。課題を埋めていたときのそれとは比にならないぐらいだ。しかも、妖力は紛れもなく久遠のものだった。
「雷、用は俺にあるんだろ。天花は関係ない」
勇人は力強く言った。勇人の今までにない様子に天花はただ呆然と勇人を見ていた。雷はすっかり天花の興味を失って勇人に体を向けて、口元をゆがめた。
「久遠、やっと本気になったか。だが人間に化けたままなのは気に入らねえな」
「残念だけどマジで俺は久遠じゃない。たまたま変な力を持った男子だよ」
勇人は先程の迫力とは打って変わって、眉をハの字にして笑った。けれどすぐに表情を硬くして言った。
「俺は誰かを傷つけるのは嫌だけど、今回ばかりはそう言ってられない。お前は俺の大切な奴を傷つけた」
キッと雷を睨んだ勇人に伴ってザザザと木の葉が大きく揺れ、風が強く吹き始めた。頬に妖力がぴりぴりとする。別に寒くはないのに天花は寒気を感じた。
(これが久遠の力……!)
雷の方も流石に身構える。こちらからも負けじと妖力があふれる。
「許さない!」
その一言が響いた瞬間、一斉に木の葉をはじめとしたあらゆるものが雷に襲いかかった。雷は三つに割れた尾を振ってその全てを薙いだ。
「そんな攻撃で俺に聞くとでも思ったのか……!」
目の前に勇人がいた。雷はしまったと後ろに下がろうとしたが悲しそうな勇人の目を見て刹那動けなくなった。勇人の手が雷の額に触れる。
「許さないけど、君に深手を負わせたらきっと俺は後悔するんだろうね」
雷に触れた手が熱を持ち、熱はどんどん広がっていく。咄嗟に雷は振り切ろうとしたが何故か出来ない。そのままカッと目の前に光が炸裂した。


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