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妖(和麻)完
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「嘘じゃないぜ。お前は九尾の狐、久遠だ。お前から久遠の妖力が出ていたしな」
すると子供は姿をたちまち大きな化け猫の形にしていく。大きさは勇人の身長を遥かに越していた。双眸がぎろりと勇人を捉える。あまりの大きさに勇人は目を白黒させる。
「化け猫ってことは雷?」
恐る恐る尋ねられると化け猫は裂けたような口でそうだと答え、そのまま雷は勇人ににじり寄ってきた。
(く、喰われる!)
咄嗟に勇人は雷から距離を取るように飛び退く。サアッと背筋が凍った。冷汗が吹き出す。しかし雷はすぐに距離を詰めてくる。
「おいおい、本気を出してくれよ。まだ勝負はついていないんだからさ」
怯える勇人を見て雷はまた笑った。

「勇人!」
凛と天花の声が響く。
 天花が雷のこめかみの辺りに蹴りを入れる。雷が少し傾く。その隙に勇人に駆け寄り勇人を雷の目につかないような茂みに押し込んだ。急いで戻ろうとする天花の服の袖を勇人がつかんだ。
「お、おい。あいつ、俺のことをあの久遠だって」
「……そうか」
天花は内心やはりと思った。天花も雷と同じく勇人が久遠だと思っていたからだ。
「詳しい話は後だ。とりあえず雷を倒さない限りあいつは勇人を殺そうとし続ける」
一層勇人の表情が強張る。後方で木が薙ぎ倒される音がした。雷が怒って暴れたのだ。
「このままじゃ、俺らの住処がなくなっちまうから行ってくるな」
天花はそう言い残してふっと笑い、雷に立ち向かっていった。

 雷が天花を見つけると瞬きする間もなく襲ってきた。既の所で雷の爪をかわす。
「邪魔をするな! 久遠を何処に隠した!」
「俺の住処で暴れられると困るんだよ。さっさとどっかに行け!」
雷の形相に物怖じせずに怒鳴り返す。続いて天花が素早く雷の目を狙うが敢え無く叩き落とされる。天花の全身に激痛が走る。雷は構わず天花に爪を振り下ろす。飛びそうになる意識に必死に掴まりながら天花は爪を避ける。
 雷と天花では体格差がありすぎて勝負は目に見えていた。現に天花は大口をたたいたものの攻撃をかわすのが精一杯だった。
(どうしよう。このままじゃ天花が死んじゃう)
勇人は茂みに隠れることしかできない自分の無力さに嫌気がさした。強くなくたって別に構わないとずっと思っていたが、今ほど自分に力があればと思わなかった。
(俺が久遠なら天花を助けることが出来るのかな)
(俺に久遠みたいな力があれば……)

 目の前が真っ白になった。


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あきゅろす。
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