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妖(和麻)完
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最近天花の態度が少しおかしい、と勇人は感じていた。勇人の反応をじっと観察をして何処か探り入れるような質問をするからだ。この間みたいに「両親はいるのか」という質問から「お前は何者か」という質問までだ。その質問一つ一つは不思議と勇人が答えにくいものだった。両親を見たことはない。何者かと聞かれても俺は俺でただの若者に過ぎず、曲者でも何でもない、と勇人は思っていた。ところが天花の質問によって「勇人」は「普通の人間」なのか分からなくなっていた。そもそもどのような人生を歩んでいたら「普通」でどんなことが出来ていたら「特殊」なのかさえ分からない。
(ああ、もう。考えたってきりがない!)
勇人が頭を抱えた。すると勇人にむかって手を振っている子供が見えた。遠くにいるため表情は窺えないが確かに勇人を呼んでいた。
「誰? 親戚に居たっけ」
少し疑問を抱えつつ勇人は子供の方へと進んだ。子供は勇人が向かってくると分かるとどんどん歩いて行き、たまに後ろを振り返ってはちゃんとついてきているかを確認する。子供は勇人と天花が出会った雑木林の中に入った。勇人も不思議に思いながらひたすらについていく。

 子供がやっと止まったのは雑木林のかなり奥深くだった。さすがに怪しいと感じる勇人。しかし怪しいと気づき、危険を感知するのが遅かった。子供はくるりと振り向くと急に笑い出した。その笑い声に子供のような無邪気さはなく、嘲笑に近かった。
「ここまで付いて来るなんて、本当に覚えてないんだね。久遠」
勇人の顔色がさっと変わった。
「どういうことだよ」
やっと出できた言葉は掠れていてみっともなかった。
「嘘だろ。だって俺は人間で久遠は……」
勇人の頭の中で天花とのやりとりが再生される。


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