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火結(禮晶)完

どうやら今上陛下は自らが今、座っている玉座、ひいては金や権力の様な代物…を厭わしく思っているらしい。

囲炉裏の中に粗朶を放り込みながら火結は黙っていた。
聖の問題であって、自分が何かしてやれる様な事ではない。
部外者が必要以上に関わっては更なる混乱を招くだけだし、ロクな展開にならないのは目に見えている。
たっぷり百を数える頃、沈黙を破ったのは聖の方だった。
「私が帝位に就かされたのは三歳の時だった。」
「………。」
まぁ、確かに三歳では帝位を自ら欲する事はなかっただろう。
「何が全て我らに任して頂ければ陛下が御心配なさる様な事など起こりは致しません……だ。大嘘つき共が。」
ぱちん、と囲炉裏の火が爆ぜる。
「まだ三歳だったんだぞ。鸚鵡とかと同じ程度の知能だとか言われる年齢だったんだぞ。鸚鵡が国の長でどうする。」
何で鸚鵡。
笑える様な状況ではなかったので笑わなかったが、内心で火結は面白がっていた。
やはり、彼は面白い人間である。
「国政も財務も人事も全く分からなかった。気付いた時には国中が大混乱に陥っていて……
 何とかしようとしたけど全然駄目だった。何が天孫だ、所詮はお飾りなのに。」
火結は何も言えなかった。
聖が言っている事は事実であり、現実なのだ。
まぁ、聖自身が一番よく分かっている事なのだろうが。
聖の呟きの中には彼の自責の念…何も出来なかった自分への嫌悪感…がはっきりと滲み出ている。
「何が聖帝だ、何も満足に為し遂げられないくせに」
「………自分で聖帝だと思っている奴よりはマシだろう。」
聖は呆気にとられた表情で火結を見た。
思いもよらぬ事を聞いた、と表情にはっきりと書いてある。
火結は少し表情を和らげた。彼は良い帝だろう、きっと。
「世の中に慢心ほど恐ろしいのは無いと俺は思うが?」
「そう……か」
聖はそれ以上何も言わなかったが、それでもその表情からほんの少しだけ暗さが消え失せていた。


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あきゅろす。
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