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火結(禮晶)完

「すまない、色々と世話を掛けた。」
「そうだな。」
沈黙してしまった少年が流石に可哀想になったので火結は気にする事じゃないと言ってやった。
「俺はこの翔鳳峰の主様から守り番を任されているのでな。死人が出ると色々と事後処理が面倒臭いんだ。」
少年が納得した様な表情をする。
「だから目が紅いのか?人間ではないのだろう?」
人間ではない自分が言うのもどうなのだろうかとも思ったが、火結は一応少年に注意しておく事にした。
「………お前、いくら黒髪と黒い目の奴しか今まで見た事が無かったとしてもいきなり人間じゃない発言は止めとけ。
国を統べる皇族の一員なら尚更、見た目で判断するな」
民族的な特徴だから仕方無い事なのだが、桓ノ国を含めたこの辺りの地域に住む者は大抵が黒い髪に黒い瞳なのだ。
だが稀に青色の瞳の子供が生まれたり、先天的な問題から色素が薄く、髪や瞳が黒よりも茶色に近い者もいる。
それだけでなく、遥か西方に行けば金髪碧眼が一般的だ。
「それに皇族の祖先神も薄藍の瞳だろう。」
この国に遥か昔からある伝説に、とある皇子が神仙になって国と皇族の守護者となったというのがあるのだ。
その皇子の瞳も確か黒ではなくて薄藍色だった筈である。
「……そうだな。すまん、前言撤回する。」
少年の表情に反省の色が浮かぶ。
「俺に関してはわざわざ撤回しなくても良かったんだがな。此処にいる人間は桓ノ国の皇族だけだ。俺も違う。」
「そうなのか?人ならざるモノを見るのは初めてだ。」
おもむろに少年は火結の身体に手をかざした、が……何も起きない。少年は残念そうに呟いた。
「突き抜けない」
「おい。俺は幽霊じゃないぞ。」
「じゃ、精霊?」
「………まぁ、それに近いな。」
そう言えばお互いに名前すら聞いていなかったな、と思った火結は遅まきながら自己紹介をする事にした。
「俺は火結という。お前は?」
少年は少し躊躇う様に沈黙した。ややあってからぼそり、と
「聖(ショウ)。」
火結は眉を顰めた。
かなりの前の話だったが新しい皇帝が即位して、それは良いのだがその帝がまだ三歳かそこらの幼帝だったのだ。
その為、賄賂やら不正やら何やらが横行してしまい、桓ノ国中が大混乱に陥ってしまった時期があったのである。
それ以来その帝に関して噂は今まで聞いた事が無かったが、その皇帝の名前が確か………聖、だった筈だ。
存在感の薄い帝だとは思っていたが、彼なのだろうか?
「もしかして、現帝?」
「…………。」
聖は沈黙してしまったが、それは如実に肯定を表していた。
「転落死しなくて良かったな。皆が大騒ぎするだろう。」
「それは無いな。寧ろ涙を流して喜ぶと思うぞ」
何も好きで就いた帝位ではないし、金も権力も欲しい奴にやるから、
放っておいてくれれば清々するのだろうにな…と聖はまるで自嘲するかの様な調子で呟いた。


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あきゅろす。
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