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火結(禮晶)完

「………小僧、死んでいるのか?」
崖の急な斜面に逆らって生えている木の根元に引っ掛かってぐったりとした人間の少年を見つけ、火結は声をかけた。
小僧と言っても外見的には火結とそう年の変わらなそうな少年だが、時間の流れ方は種族によって大きく異なるので
外見は同じ位でも火結は少年より遥かに長く生きている。
その声に少年は薄く目を開けた。まだ生きていた様だ。
「………死んでいたらお前に話しかけはしないだろうな。」
「それもそうだな。」
恐らく足を滑らせて斜面を転げ落ちて来たのだろう。
雨上がりだったから高価そうな生地の衣に泥がべっとりと付着していて、洗うのが大変そうだなと火結は思った。
「大丈夫か?」
「正直に言うと余り大丈夫ではない……痛っ」
この峰にいる人間なら少年は間違い無く皇族の筈なのだが、やけに気取った所の無い、…面白い少年だと火結は思った。
「捻挫か。立てそうか?」
「無理そうだ…」
火結は溜め息をつくと少年を背負い、歩き出した。
翔鳳峰の守り番を任された者としてこの少年を助けるのは彼の仕事の範囲内であり、放っておく訳にはいかなかった。
峰の夜は厳しい。ひ弱な皇族の少年などでは耐えられまい。
「何処へ向かっているのだ?」
背中から少年が尋ねて来た。
既に蝙蝠達がひらひらと舞い始めている様な時刻である。
おまけに明かりになる物が一切無い様な状況だったので、少年からは火結が何者なのかは全く分からない。
もしかして、人攫いとか人喰い鬼?と思った少年の考えを見抜いた火結は面倒臭かったが、一応言っておいた。
「安心しろ。俺は取り敢えず人攫いでも人喰い鬼でもない。」
「………取り敢えず?」
面倒臭い子供だな、と思いながらも火結は続けた。
「言葉のあやだ。嫌なら此処で降ろしてやるが?」
「それは、遠慮したい……。」


「しかし、身体は小さいのに、意外と体重はあるんだな。」
「……それはそれは大変申し訳ありませんでしたね」
「いや、別に良いさ。鍛錬という事にしておいてやる。」



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あきゅろす。
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