[携帯モード] [URL送信]

火結(禮晶)完

桓ノ国の東端、翔鳳峰は天帝陛下の峰だという伝説があり、この国の皇族以外は入る事も許されない霊峰であった。
…まぁ、そうは言っても人間ではないモノ達には無関係だが。


日も沈み切って久しい時刻だったが、翔鳳峰の険しい山路を明かりも点けず急ぎ足で登って行く少年がいる。
黒い髪と、火炎を思わせる様な紅い色の瞳…火結、だ。
彼は夜目が利く上にこの峰を知り尽くしており、こうして明かりをつけずに歩くのも造作無い事なのである。
この峰は彼の師、水蛇の親友にして(不本意ながら)上官も兼任しているという存在、縹(ヒョウ)のものであり、
割と多忙な彼に代わって火結はこの峰の守り番をしていた。
翔鳳峰の主である縹はつまり、天帝陛下なのだが、そうとは思えない気さくな御仁だ。知った時は仰天したものである。
但し、気さく加減が過ぎて仕事をサボる事もしばしばで、水蛇に怒鳴られては涙目になっている姿もよく見かける。
良いのだろうか、とも思うが…それでも世界はそれなりに平和にまわっているから、別に良いのだろう。

………多分。


[次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!