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火結(禮晶)完
拾玖
「よくやったな。」
火が鎮まった後、若干くたびれた感じの火結を縹が労うと彼は口元に僅かだが嬉しそうな笑みを浮かべた。
聖が思い切り火結の背中を叩く。
「おい、やったな!」
「痛……お前、手加減という単語を知らんのか。」
恨みがましそうな目で睨む火結。相当、痛かったらしい。
「火結なら大丈夫だよ!…………多分。」
「だから何でまた多分をつけるんだ。」
二人は顔を見合せて笑った。
「…………なぁ、聖。」
「何?」
火結は少し、躊躇うかの様に視線を足元に彷徨わせた。
「俺にとっては火も使い様だったけど……」
何となく、分かったのだ。
例えば刃物が便利な道具にも殺害の凶器にもなり得る様に自分の持つ力も、使い方を誤らなければ良い話なのだ。
忌み嫌い、抑え込む事ばかりを考えなくても良いのである。
それは、自分だけに当てはまる事ではない。
「お前にとっては金と権力も使い様、だろう?」
「…………!」
瞠目した聖に、にやりと火結は笑った。
どうやら、あの火事の前によりによって聖に格好良い事を言われたのが余程悔しかった様だ。
お返しに、という事か。
「ふん、そんなの一万年と二千年前から知っている。」
「百年ですら生きていないだろう、お前は」
お前は、というのがミソである。
悔しそうな顔の聖を見て、火結は声を立てて笑った。


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