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火結(禮晶)完
拾参

そんな事を思い出した三人は再び顔を見合せて笑った。
「まぁ、何だ…せっかく出したんだし。」
「そうだな。」
「有り難く頂くとするよ。」
その後は何故か執務室で飲めや食えや(主に縹)の大騒ぎ。この時ばかりは水蛇からのお咎めも無しである。
酒のお陰なのかどうかは分からないが、日頃から水蛇にはツルツルだとか言われている縹の脳味噌に妙案が閃いた。
余りに妙案すぎて、思いついた自分を褒めたい位である。
一人でニヤニヤしている縹を水蛇は無言で見つめていた。
台詞をつけるなら『何だこの不審者は』だろう。
因みに那岐も縹を見ていたが、彼の場合は憐れみの視線も混じっている。ある意味、一番性質が悪い。
「おい、其処の目が縹色な不審者一号。」
「水蛇、いくら何でもそれってどうなのさ……」
そろそろ目の据わって来た水蛇と、一応は窘めておく那岐。
水蛇の目は紅で、那岐は漆黒。執務室には三人以外いない。
婉曲な様でその実、全く婉曲ではない呼びかけなのだ。
「何だい?」
とうとう自分でも認めたよ、と水蛇と那岐は同時に思った。
と言うか一号って何なのだろう。言った水蛇にも分からない。
「さっきから何をニヤニヤしているんだ。気色悪いぞ。」
「いや、別に?」
怪しい、怪しすぎる。
絶対に何か企んでいるよ、コイツ。
疑いの眼を向ける親友達二人に、縹は強引に話題を変えた。
「あ、どうだ?俺達三人でお笑いでもやるか?」
「無理」
「断る」
「………二人共、もうちょっと考えてくれても良くない?」
話題を反らされた事に水蛇も那岐も気付いてはいたものの、二人共敢えてそれを口に出す様な真似はしなかった。
縹を熟知し、尚且つ非常に信頼している水蛇と那岐だ。
今回の件は彼の裁量に任せてみよう…、と思ったのである。
酒杯を片手に、気心の知れた三人の宴は盛り上がって行く。
こうして、彼らの夜は更けていったのであった。

余談だが、翔鳳峰で火結と聖が作った茸汁は結局全て二人の腹の中へ消えた。
後にそれを知った水蛇に怒られている縹の姿と、そんな様子を見ながら苦笑している那岐の姿が多数の者達によって目撃された。

…………らしい。


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