火結(禮晶)完
壱
火結(カケツ)
「お前、何処から漂って来たんだ?」
基本的に死者と生者の世界を往来する事は出来ないのだが、水の恵みと同時に死の恐怖を司る神である水蛇(スイダ)は
数少ない例外として二つの世界を往来する事が出来た。
その時も彼は野暮用を終えて死者の世界から生者の世界へ帰る途中だったが、
その狭間で死者として逝く事も出来ず、さりとて生者にもなれずに漂っているモノを見つけたのだ。
「…………」
それが返して来た答えに水蛇は瞠目した。
「そうか……それは気の毒な事になったな」
彼はしばらく考えた後、それに手を差し伸べた。
「私と共に来るか?」
それは少し躊躇っていたが彼に是という意思を示した。
「お前の名前……どうする?私が新たに付けるべきか?」
再び是という意思表示。
「そうか。なら、火結(カケツ)というのはどうだ?」
こうして、物語は始まったのだった。
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