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「小説」(紺碧の空)
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 さて、僕らは果てしなく続く線路と平行して歩き続け、そろそろ太陽も夕日と名前を変える頃になって、ビルが言い出した。
「よし、このあたりでディナーを食おう」
下を見ると、今はほとんど誰も使っていない馬車道の先に、廃墟と化した街があった。僕らは保安官がうろついていないことをしっかり確認してから、馬車道に降りた。
「あそこに見えるのが、ブライトスプリングスだ」
「あんなところで飯が食えるのかい?」
「質の方は問うなよ。ただ、量だけは保証する」
あの時から、サムは一言も喋っていなかった。何か考え事をしているようだったが、その事も誰も問わなかった。
 寂れた町に入ってゆく。店という店にはひとけがなく、まさにゴーストタウンだった。ビルは店のうち一つに見当を付けると、ドアを蹴破った。
「何者だ!」
どうやら、店には先客がいたらしい。ビルが両手を上げて戻ってきた。その後ろには、拳銃を突きつけた何人もの男たちがいる。
「ギャングだ」
サムが言った。ちょうどその時、蹴破られたドアから一人の大柄な男が出てきた。不精髭に鉤鼻で、いかにも獰猛な顔つきをしている。こいつがボスか。
「久しぶりだなあ、ビル。しかし、よくもこんな所へのこのこと顔を出せるな」
「ブラックイーグル……あんた達も、こんなところで何してるんだ」
ブラックイーグルが合図をすると、部下たちがピストルを下した。
「ビル。あんた、この前の借りは返させてもらうぞ。だがな、バド・キングを撃った事だけはゆるさねぇ。俺と決闘しろ」
部下のうち何人かが、溜息をつく声が聞こえた。二人は背中合わせになると、拳銃を構えた。
「誰か合図をしろ。ああ、そこの黄色人種。お前がやれ」
そう言われても、どう合図して良いのかわからない。すると、サムが教えてくれた。
「1,2,3、だよ」
「早くしろ」
僕は前に進み出ると、二人に了解をとった。それにしても、本当に撃つんだよなあ……先ほどの部下の反応は何を意味していたのだろうか。
「1、」
二人はそれぞれ一歩ずつ離れる。
「2、」
ブラックイーグルは、突然後ろを向いた。何だこいつ!
「卑怯者!」
サムが叫ぶやいなや、僕はブラックイーグルの前に飛び込み、ビルが振り向き、ブラックイーグルが発砲し、部下たちが拳銃を構え、これらのことが同時に起きた。
「危ない!」
弾丸は僕めがけて飛んできた。その時、高速で接近する物体を感知したパワードスーツが弾着を計算し、装甲板を展開したのだ。アルティムパリスチールのシールドは無傷だった。そして、僕が倒れこんだ後ろから、ビルがブラックイーグルの心臓を打ち抜いた。さらに、ビルを撃とうとした部下の拳銃をサムの弾丸が弾き飛ばす。
「逃げろ!」
恐れをなしたギャングたちは、一目散に逃げ出した。ヴェクセルが火球を振り回していたのである。ブラックイーグルは、息絶えていた。
 「あんた達、すげえなあ」
ギャングたちが溜め込んでいたラム酒を引っ掛けながらビルが言う。僕は、干し肉を噛み切りながら答えた。
「あなた達も、結構な腕前でしたね」
「ああ、ここいらでは名が知れてるんだぜ。早撃ちのビルと」
「スナイパー・サムだ」
サムも幾分調子が良くなったらしい。顔を真っ赤にしながら、アルコールを喉に流し込む。
「こいつはすげえんだぞ。まともな決闘をやったらこいつに勝てるやつはいねぇ」
「サムときたら、この前200ヤード先の警備兵の帽子の羽飾りだけを撃ち抜きやがった」
そんな事を話しながら、その晩はブライトスプリングスで過ごした。


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あきゅろす。
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