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「小説」(紺碧の空)
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 「ここは……」
赤茶けた大地。どこまでも広がる草原……。
「痛ててて」
横に中世風の服を着た男が横たわっていた。助かったのだ。
「あれ、あの未来少年は?」
どこにも見当たらない。それどころか、町の跡すら無い。一体何があったんだ? 記憶を辿る。最後の大爆発……あれで、すべて消し飛んでしまったのだろうか。
「物語は終わったんだよ」
ヴェクセルが言う。ということは……? 僕の心の中で一気に様々な感情が沸き起こった。
「じゃあ、ここが本当の世界?」
「かもしれん」
誰もいない。荒れ地が続く世界。これが、真実なのだろうか。いや、そんな筈は無い。少なくとも、僕らの小説を書いた人物が存在するはずだ。
「誰もいないのかな」
「あそこを見ろ」
僕らのいる所は小高い丘のようになっていて、下に平野を見渡すことが出来た。その荒野に、一筋の線が真っ直ぐに延々と続いている。
「線路だ!」
「何か来るぞ」
真っ黒な煙を吐きながら近づいてきたのは、蒸気機関車だった。古風なデザインの先頭車に、貨物列車が幾つも繋がっている。遠くからでよく見えないが、側面に何か書いてあるようだった。
「お〜い、お前たち! 大丈夫か」
「おいビル、あんまり余計な事には首を突っ込むなよ」
振り返ると、二人の男が斜面の上に立っていた。カウボーイ? どう見ても外国人なのに、やはり日本語を喋っている。
「サム、見ろよ。多分ここから落ちたんだ」
ビルと呼ばれた男が、ゆっくり斜面を降りてくる。近づくにつれて、僕らの服装がよく見えるようになり、顔が怪訝になった。サムは上の方からただ見ている。
「何だ、あんたら? 宇宙人か?」
無理もないだろう。一人は魔道師、一人はパワードスーツを装着しているのだから。
「あ、その、一応地球人です」
「そうか、それは良かった」
ビルはにっこり笑うと、手を差し伸べた。
「俺の名前はビル。あっちで見てるのがサムだ」
「どうも。僕は灰条 凰です」
「私はヴェクセル・エルトラーク」
「よろしく。しかし、変わった名前だね」
ビルは僕らと握手をすると、斜面を登って行った。サムはそれを注意深く見ている。
「サム、見ろよ。ちゃんと人間じゃねえか」
「ああ、そうかもしれん。だが今は人を助けている場合じゃないだろう」
何に怯えているんだろう、こいつは? 僕は、サムが片手で腰の拳銃をいじっていることに気付いた。
「あの、ビルさん」
「何だい」
「つかぬことをお聞きしますが、ここは一体?」
「ああ、あんた達道に迷ってたのか。ここはトゥームストーンから東に30マイルくらいの所だ。お前らどこに行こうとしてたんだ?」
「あのぉ、どこのトゥームストーンですか?」
「はあ!? あんた、なかなかジョークがうまいな! 教えてやろう。ここは自由の国アメリカの、アリゾナ州だよ!」


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