「小説」(紺碧の空) ページ:6 とりあえず、パワードスーツを装備した。かっこいいのか、かっこ悪いのかよくわからないデザインだが、性能は高そうだ。 「よし、準備OKだよ」 「俺がスカーレット・インフェルノを喰らわせて奴の注意をひくから、オウはその隙に上空からあいつに近づいてくれ」 「了解」 「がんばってね〜」 未来少年は体育座りをして手を振っている。ふざけんな。 「何だよ、お前何もしないのかよ」 「もちろん。未来人は極力過去に干渉しないんです」 干渉しまくってんじゃないか……と思いながら、僕は淵に立った。 「3,2,1,で行くぞ」 すでにヴェクセルは火球を用意している。 「3」 「2」 「1!」 強烈なGがかかる。気付くと、地上が遥か下方に広がっていた。……すご。 「さて、ここのタッチパネルを……」 上昇がおさまって、体が安定する。一体、あいつは何年後から来たんだ。下を見ると、ヴェクセルが手を突き出して炎を操っているのが見えた。まるで、火炎放射機みたいだなあ。すると、砂煙が晴れてきた。奴の姿が見えてくる。 「何だ、ありゃあ……」 グロテスク。この言葉が最も似合う生き物だろう。目は半透明の膜に覆われており、口は開いたまま。ブヨブヨの皮膚の体で足だか何だかわからないものを使ってのたうちまわる。そこへ、ヴェクセルの炎が届き、怪物は振り返った。その隙に後ろへ回り込む。その瞬間、奴が破壊光線を吐いたのがわかった。閃光と衝撃波。とっさに目を覆い、再び開けるとまだ光線が出ていることがわかった。あれは……ヴェクセルの炎と怪物のビームが衝突し、激しく鬩ぎ合っているのだ。 「あ……あんなに強かったんだ」 こうしてはいられない。体を前に傾け、怪物へと接近する。奴はヴェクセルと戦うのが精一杯で、僕には全く気付いていないようだった。どうやら、ヴェクセルの炎はただの炎ではないらしい。しかし、さすがに大気圏に突入してきた奴の皮膚は焼けない。よし……あと少しで奴の首元に手が……。 「オウ! 気を付けろ」 怪物は突然こちらを向いた。ゲッ、口のど真ん前……。奴の見えているのか見えていないのかわからない眼が、こちらを睨みつける。 「そんなことでやられるか」 そのまま奴の口に向かって突進する。 「なんたって」 右手を前に突き出す。 「僕は」 怪物の口の奥から光がさす。 「主人公だああ!」 焦電波動素子起動。奴の唇に当たった。細かい振動が、こちらにも伝わってくる。怪物は身の毛もよだつような叫び声を上げて大きくのけぞると、ブヨブヨだった皮膚がパンパンになるほど膨らみ、 「おいおい、待てよ……」 爆発した。 [*過去へ] [戻る] |