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「小説」(紺碧の空)
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 三十分後、二人はクレーターの淵にいた。中を覗き込むと、土煙でよく見えなくなっていた。
「あそこで怪物が暴れてるのか」
「多分……」
その時、さっき聞いたような声が聞こえた。
「お〜い! はあ、こんな所にいたのか」
「お前は!」
例の少年である。そういえば、こいつはどういう役どころなんだ?
「もう、なんで逃げるのさ! こっちにも色々事情があるのに……て言うか、あんた誰!?」
少年はヴェクセルを睨みつけた。僕は、彼が何か荷物を持っていることに気づいた。
「それ、何?」
「待ってました! これは我々が開発したパワードスーツで、キミに装備してもらうために持ってきたのです!」
「我々って……誰々だよ!? なんかお前、日本人ぽくないし」
それを聞いて、少年は笑った。何なんだよ。答えろよ。
「フフフ、僕は日本人どころか、この時代の人でもないんだよ。わかる? まあ、これ以上は言えないけど」
「それ、どういうことだよ。教えろよ」
「あのね、物事には順序ってものが」
すると、ヴェクセルが呪文を唱え終えて火球を少年に向けて構えた。
「わかりましたわかりました、言いますよ。僕は未来から来たんだ。あのモンスターが倒された後のね。あの後色々研究が進んで、キミがモンスターを倒したこと、キミが装備していたものは当時の科学力では到底作れなかったこと、なんかがわかったんだ。そこで、過去に行ってこのスーツをキミに渡してつじつまを合わせようということになったんだ。わかった?」
「わかったような気がするけど……じゃあ、僕は勝つんだね? そうでしょ?」
しかし、少年は答えなかった。何だよ。勝てないのかよ。
「もしかして、戦ったあと行方不明、とか?」
「いやいやいやいや、実際、時空間は平行線上に進んでいるから、もし勝てなかったら、僕がいなくなるだけ。僕の世界ごとね。だから、勝つという保証はないし、キミが行方不明になるという保証もない」
「やっぱりなるんじゃないか」
まあいい。もしかしたら、それでこの世界を抜け出せるかもしれない。
「おい、オウ。そろそろ行くぞ」
「わかった。ところで、そのスーツどうやって使うの?」
「はい、まずここのボタンを押すと、バックパックのサブフライトシステムが起動して、自由な空中戦闘が可能になります。また、モンスターの皮膚はアルティムパリスチールで形成されているので、通常の兵器では有効なダメージを与えることができません。そこで、このスーツの右手に装備されている焦電波動素子を使って敵を内部から爆死させます。よろしいですか?」
「えっと……その、なんちゃら波動砲の射程は?」
「焦電波動素子です。これは、目標に接触しないと効果がありません」
「ええっ! てことは……」
僕はクレーターの底を見た。なんで、僕なんだよ。


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あきゅろす。
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