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「小説」(紺碧の空)
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 事件は、家の中が大体乾き、ヴェクセルの存在にも慣れ、今日親が旅行から帰ってくるという日に起こった。僕はいつものようにとある市立中学で面白みに欠けた授業を受けながら、今いったい魔道師が何をしているのか考えていた。それは突然起こった。窓の外が閃光に包まれると、爆音、というか衝撃波が来て窓ガラスが一気に割れ、窓際の女子が悲鳴を上げた。
「な……何だ!?」
もう二度と聞く事は無いと思っていた学校独特の警報音が鳴り響く。無機質な声で、『地震が発生しました』という言葉が繰り返し流れた。
「地震だってよ」
「そんな訳ないじゃないか」
様々な流言が飛び交う中、僕はベランダの方に向かった。ガラスで顔を怪我して泣きじゃくっている女子がいる。その横を通って窓の外を見ると、この世界が小説の中のものだと信じたくなるような光景が広がっていた。
 校庭に集まろうにも、校庭が無かった。校舎のぎりぎりまでクレーターが及んでいる。つい先ほどまで何万もの人々が暮らしていた町が消えて無くなっていた。
「こんなの、有りかよ……」
その時、頭上を巨影が通り過ぎて行った、ジェット機だ。音が聞こえなかったので、エンジンが止まっていたに違いない。その旅客機はだんだんと高度を落とし、クレーターの中心辺りに墜落した。僕はまだその時、その機体に両親が乗っていた事を知らない。
「隕石か?」
隣にいた奴が呟いた。生徒も教師もパニック状態になって、大方何処かへ行ってしまった。
「一体どうすれば良いんだ。こういう時って」
「待て! あそこを見ろ」
煙が晴れて来ると、何か巨大なものが立ち上がっているのが見えた。おいおい、なんだよあれ……。
「何かヤバくないか」
「逃げろ!」
僕は死に物狂いで駆け出した。隣にいた奴も走る。その時また閃光がきらめき、僕のすぐ上を通った。校舎が吹き飛び、隣の奴も跡形も無く消え去った。今のは何だ? ビーム? レーザー? そんな事はどうでも良い。今確かなのは、逃げなければならないという事である。


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あきゅろす。
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