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「小説」(紺碧の空)
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この事件は、ただの自殺なのだろうか。もしそうだとしたら、小説として成り立たない。もし巧妙な殺人であったら、これは推理小説でありそうな話だ。
「オウ、わかったか?」
ヴェクセルがこっそり聞いてきた。
「さっぱり」
「多分、この事件の謎を解いたらこの小説は終わる。何が何でもやってやるぞ」
ああ、一番信じたくないことだったのに……。
「あの、祖倉さん。ところで、祖倉さんは誰が犯人だと思いますか」
「おや、山田君。いきなり、誰かが犯人だと決めつけるのはよくないよ。それどころか、今回の事件が本当に自殺じゃないとも限らない。たとえば、僕らが調べるまでもなく、望杉さんは浮気に気付いてしまったとも考えられる」
「なるほど……」
「でも、どうやら富良野君はこのままで気が済まないみたいだねぇ」
そのとき、マンションのドアが開いた。ぞろぞろと警察が出てくる。先頭の警部が警察手帳を開いた。有栖戸 照子。
「先程の話の続きを、署で聞かせていただきましょう」
「えっ……それって、なんか」
「大丈夫です。あなたたちのことはそれほど疑っておりませんから。念のためです」
 入念な取り調べの末、どうやら僕たちは容疑者から外れたらしかった。身元確認の時はひやひやしたが、案外山田太郎とマイケルで通用したのである。やはり小説とはこんなものだろうか。
「ありがとうございました。もう帰っても結構です」
有栖戸警部が半ば追い出すような口調で言うので外に出ると、ドアの向こうに一人の男が待っていた。
「出……出刈警視!」
「有栖戸君、ご苦労だった。おや、祖倉じゃないか!」
知り合い!?
「久しぶりだね。君も変わらないなぁ」
祖倉氏が馴れ馴れしく話しかける。何と、彼らは幼馴染みであったのだ。
「今も探偵をしているのかい……? 何でも、力になれれば良いが」
「望杉氏の殺人事件について調査していたんだよ……何か情報は入っていないかい」
「ああ、その事か……こっちへ来てくれ」
出刈警視は少し表情を曇らせ、取調室へ戻るように合図した。
「ここだけの話だが、望杉夫人が怪しい動きをしていたのだ。夫人は望杉氏が死亡する一週間前、氏に巨額の生命保険を掛けていたんだよ。祖倉なら、その意味は分かるだろう?」
「やはり彼女が兼夫さんを殺したんですね」
「誰だい、君は?」
「富良野君は僕の優秀な助手だよ。若干早合点が多いがね……夫人は望杉氏が自殺すると知っていたのかもしれない」
「とにかく、今回の事件はただの自殺ではなさそうだ。出来れば捜査に協力してもらいたいのだが」
「願ってもない事だ。是非、やらせてもらうよ」


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