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「小説」(紺碧の空)
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 事務所についてしばらくして、祖倉氏から電話がかかってきた。どうやら、浮気は本当だったらしい。
「今相手の男の家にいるよ。どう、富良野君も来るかい?」
「結構です」
ヴェクセルは、既に寝ているとの事だった。まだ八時だぞ。
「そっちはどう? 望杉さんには会えた?」
「それが……いくら待っても出て来ないので、管理人さんに聞いてみたら門前払いされちゃって」
「へえ、それはおかしいなぁ」
祖倉氏も、部屋番号は知らないとの事だった。一体何があったのだろうか。とりあえず、望杉夫人が家に帰るときに確かめようという事になった。
 翌朝。望杉夫人が帰路についたという連絡を受けた僕たちは、藻寄駅で合流し、彼女の後を追った。夫人は脇目も振らずに自宅のマンションに向かう。何かに怯えているかのようだ。
「あ、足早いっすね」
「多分、ご主人が帰って来てないか心配なんだろう」
 十分後、僕らは再びマンションの前にいた。問題はいかにしてオートロックを突破するかだったが、これは案外簡単に解決した。大勢の奥様たちが大声で話しながらドアを開けて行った時、密かに紛れ込んだのである。あやうく彼女を見失いそうになったが、祖倉氏が閉まりかけたエレベーターに足を引っかけて望杉夫人と相乗りをする事になった。気まずい一瞬。だが、夫人は僕らの尾行には気付いていないようだった。四階で停まる。どうする? 僕らも一緒に降りたが、祖倉氏とヴェクセルはエレベーターに残った。怪しまれないように、他人のふりをする。僕と富良野君が夫人が奥から三番目の部屋に入っていったのを見届けた時、ヴェクセル達も戻ってきた。
「さて、部屋はわかったけどどうする?」
「待つか……」
だが、その必要は無かった。一分もしないうちに、夫人が部屋から真っ青な顔をして飛び出してきたのだ。
「誰か、警察を呼んで! 夫が……夫が死んでるの!」


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