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「小説」(紺碧の空)
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 さて、三日後。僕らは、指定されたマンションの前にいた。そろそろ約束の時間だが、望杉氏は現れない。
「一体どうしたんでしょうね……しかし、こんな都心のマンションに暮らしているなんて、羨ましいですね」
その時、オートロックの自動ドアが開いた。中から一人の女性が出てくる。
「あっ……あの写真の人だ」
確かに、まだ若い。望杉氏はそろそろ五十歳というところだが、どう見ても彼女は二十代だ。
「へぇ〜……すごい年の差だね」
「大方、金目当てだろう」
そんなことを言っている間に、望杉夫人は僕たちの前を通り過ぎて行った。
「やばい、見失っちゃうよ!」
「よし、富良野君と山田君はここで望杉氏を待っててくれ。マイケル君、一緒に彼女を追跡しよう」
「おっ、ストーカーかい? 乗ったぜ!」
こいつ、本当に話聞いてたのか。ヴェクセルと祖倉氏は足早に去っていった。
「なあ、君」
「はい、何ですか?」
「確か、本当は山田君じゃないんだよね……」
「はい……」
僕と富良野君はしばらく入り口の所で待っていたが、一人のおばあさんと、もう一人花粉症なのかマスクとサングラスを着用した人しか出て来なかった。一時間程経った所で、痺れを切らした富良野君が言った。
「もう、望杉さんの部屋まで行ってみよう」
「確かに、それが良いですね……部屋番号は何番ですか?」
「……知らない」
だめだこりゃ。仕方ない……とりあえず、管理人さんに聞いてみる事にした。
「あの、このマンションに住んでる望杉さんの部屋番号を知りたいんですけども……」
「あ〜、今、望杉さん家留守だよ」
「本当ですか」
「なんだい、本当だとも。さっき奥さんが言ってたからね。ところで、あんたたちどういう関係で? 何の人?」
「えっと……一応、私立探偵の者です」
管理人の顔が一気に険しくなった。何だ、一体どうしたと言うんだ。
「うちでは、そういうのお断りしてるんですよ。早く、出て行って下さい」
「そんな! 番号だけでも教えて下さい」
「望杉さんが帰ってきたら教えてもらえるでしょうよ。とにかく、無理なものは無理なんです」
にべもなく、追い出されてしまった。
 待つこと、三時間。一向に望杉氏は姿を現さず、そろそろ日が傾いてきた。富良野青年が何度電話をかけても、祖倉氏は携帯の電源を切っていた。尾行中なんだから当たり前である。
「しょうがない。もう、事務所に戻ろう……望杉さんも、何か急用があったのかも知れない」
結局富良野君が諦めて、僕らは貴音駅に戻った。


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あきゅろす。
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