story 出雲大社 ――出雲大社 とうとう夏休み。そして、出雲の扉へ行く日になった。 「うし!皆来たな。準備はいいかぁ?」 小谷は正統な装束を着て待っていた。 「いぇ〜す!」 「いぇ〜す!」 梓と萌美はノリノリだった。 「おいおい、遠足じゃないぞ」 皆は笑った。それから神殿の中に入り、地下に進む階段に掛った注連縄の封印を小谷が解いた。階段を降りた所には、ぽつんと扉が立っていた。 好樹が恐る恐る扉を開いた。扉の向こうは美しく悲しい遺跡の墓場というにふさわしい場所だった。 「気を付けろよぉ」 小谷に頷いて皆は足を踏み入れ、小谷は扉を閉めた。 辺りにガラン、ゴトン、ドサッと遺跡の崩れる音が虚しく響いていた。 「……怖い」 美来は良佳にしがみついた。 「進もう」 開人が口を開き、皆はとりあえず歩き出した。 ――数分後 「…魔物だ!」 良佳が言った。 遠くに魔物の群が見えた。 「俺らの出番だな。皆続けよ!【虚憐弾<コレンダン>】!!」 好樹から始まり、光夫、開人、萌美、梨乃が一斉に攻撃した。 見事に魔物は消え去った。 「俺も早くやりてぇなぁ」 裕生が呟いた。 やがて、目の前に一つだけ新しい遺跡が見えてきた。 「あそこだ」 ポコロが言った。真っ白で美しい遺跡。まるでそこだけ違う世界かのようだった。 「急いだ方がいい」 孝俊が口を開いた。 「?何で?」 梨乃が尋ねながら、後ろを歩く孝俊の方に振り向くと巨大な竜が迫ってきていた。 「うっそ…」 隼は冷や汗をかき、皆は全速力で遺跡に向かって走った。 だが、逃げ切れるはずもなく、遺跡前の広場で追い付かれてしまった。 「ウザいなぁもう」 開人が武器を出し、続いて皆が武器を取り出した。 「ここは俺らに任せて、理沙、行け!!」 理沙は頷き、遺跡に向かって走ろうとした。 「理沙だけじゃダメだ!!封印の解呪は全員いないと……」 ポコロが言ったその時、 「きゃっ!!」 理沙めがけて萌美が矢を放ち、理沙の足下に矢が突き刺さった。 「!!萌…?」 梓が声を掛けた。 「ん?」 萌美は自分がしたことに気付いていなかった。 「大丈夫か?」 好樹が萌美の顔を見つめた。 「大丈夫だよ。どうかした?」 萌美に何かあったのか。 「来るぞ!!」 孝俊の声で間一髪、竜の吐いた炎を避けた。 「…炎?ならあたしが…」 「待って!!」 開人が叫んだが、もう遅く、梓は氷塊を放った。だが、竜は手から雷を放ち、氷塊を粉々に砕いた。 「どしてぇ?」 梓が驚いていた。 「炎を吐いたからといって炎属性と決めつけんな。炎のやつでも反対の氷を持ってるやつもいるからな」 それからも竜は攻撃し続けてくる。 「ちっとも終わらないじゃない!!」 理沙はイライラしていた。 「光夫さん光夫さん、そろそろ行きますか?」 「そうしましょうそうしましょう」 開人と光夫の二人がニヤッと笑った。皆はさっぱり分からない。 「【汝 天空に包まれ 自由を奪われん 空束零<クウソクゼロ>】!!」 開人が呪文を唱えると、竜は透明の球体に閉じ込められた。 「【宇宙<ソラ>に平伏す醜き者よ 帰れ 虚無の彼方へと 独皇露塵<トッコウロジン>】!!」 光夫が呪文を唱えると、開人が作った壁の中の竜が収縮し始めた。竜は激しく声をあげていた。 数秒後、竜は跡形もなく消えた。 「すげぇ…。連携魔法かよ」 好樹が呟き、皆はぽかんと見ていた。 「大成功」 光夫が微笑んだ。 放課後や休日、二人はよく練習していたのだ。 ついに遺跡に侵入。入るとすぐに下へ降りる広い階段があった。長いのか先が見えない。 「降りるしかないね」 梨乃が言った。 皆は進路がそこだけと確認し、降り始めた。足下は松明の明かりでやっと見えるほどだった。 何分ほど歩いただろうか。かなり深く降りてきた。 「まだぁ?足がヤバい…」 美来は一番後ろを付いて来ていた。 「もう着くぞ」 ポコロの言葉と同時に階段が終わり、広間へと出た。 「そこだ」 ポコロが指差した先に台座があり、その上には巨大な菱形の結晶が横たわっていた。そして、それを十二の台座が囲んでいる。 「皆、それぞれの場所に立って台座に手を置くんだ」 皆はポコロに言われた通りに立ち、手を置いた。 その瞬間、皆の足下に魔法陣が現れ、光を放ち始めた。 「くっ…。」 隼が歯を食いしばった。体から力が抜けていくようで、苦しかった。 皆の手から送られた力は台座を通り、真ん中の台座に送られ、結晶に取り込まれた。 「っはぁ」 皆は手を離し、裕生はその場に座り込んだ。目を上げると、結晶は宙に浮き、青い光を放って輝いていた。「よし、完了だ。もう用はないから帰るかな」 ポコロの言葉で皆は立ち上がった。 「………どうやって帰るの?」 萌美に尋ねられ、ポコロは壁を指差した。黒い穴が空いている。 皆は次々と穴をくぐった。 「ぎゃ〜!!あはは」 中は凄いスピードで進む滑り台だった。萌美と美来は恐怖で顔が引きつり、理沙は笑っていた。 着地すると、出雲大社の、扉があった部屋だった。 「お帰りー。無事に終わったんだな」 小谷は皆の帰りを待っており、皆はニコッと笑った。 ーー翌日 「お世話になりました」 梓が言った。 「おぅ、また来いよな。光夫、甲子園頑張れよ」 皆は帰りの挨拶をし、家に帰った。 前へ『*』『#』次へ [戻る] |