story ウィーンL 「(何この曲…全然付いて行けない…。なのに理沙…すごい…!)」 萌美は楽譜を必死に追っていたが付いて行けない。しかし、隣の理沙は何かに取り憑かれたように鍵盤を叩いていた。 「………」 萌美はそっと鍵盤から指を離した。 理沙は一人で完全に演奏していた。 「萌ー!理沙ー!」 そこへ、皆がやって来た。萌美は皆の方へ振り返った。 「こんなとこで何してんだ?」 裕生は周りを見た。 「ちょっとね…」 萌美が理沙の方を向くと、皆も理沙を見た。その瞬間、理沙の姿に釘付けになった。 その姿はまるで、曲に入り込み、作曲者の曲への気持ちを全て分かっていると言って良いほどだ。情熱的で、深い演奏だった。 全てを弾き終えた時、自然と拍手をしてしまっていた。 その時、再び中央の墓石に文字が浮かび上がった。 〜扉は開かれん〜 次の瞬間には理沙の手の中に音符の形をしたブローチが入っており、中央の墓石の前の床にその音符と同じ形の窪みが出来ていた。 「これ…はめるの?」 理沙が尋ねたのに対し、開人は首を傾げながら頷いた。 理沙は椅子から立ち上がり、そっと窪みへとはめた。 すると、音符は、美しい七色の光を放つ丸い浮遊する床を作り出した。 「の、乗ろうぜ」 隼の声に皆は床へと足を踏み入れた。 その瞬間、皆は何もない真っ白な空間へと飛ばされていた。あたかも異界を思わせた。 「何…?どうしたらいいの?」 梓は辺りを見回した。 「理沙がキーなんじゃないか?」 好樹は理沙を見た。 前へ『*』『#』次へ [戻る] |