プロローグ
静かな夜だった。
普段ならば、フクロウがホーホーと鳴き、虫が飛び交っているだろうが、その日だけはただ夜の闇が広がるばかりで何も無かった。
そんな闇の中を男は少女を連れて駆けていた。
「どこ行くの?」
少女は不安そうな面持ちで、男――デュクリスにそう問い掛けた。
だが、当のデュグリスは押し黙ったまま、少女の手を引き、ひたすら闇を走っていた。
「ねえ、デュクリスってば!」
少女はなおも食い下がるが、デュクリスは黙ったままである。
デュクリスにしてみれば、立ち止まれなかった。
“――嫌な予感がする!”
デュクリスのカンが囁いていた。
この少女を集会場において置けない、と。
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