第2話 占い師 E
「名には興味ないが、顔には興味ある。……お前さん、面白い相をしておるな」
老人の言う『面白い相』がどんな相をしているのか気になった。
「興味あるようじゃな?」
老人は私が興味津々なのを見るや、
「――では、占ってしんぜよ」
と待っていました、とばかりに胸を張って、そう言った。
私は馬にまたがり、都に向かった。
だが、その足取りは今まで以上に重かった。
“――どうしょう――”
私は途方に暮れていた。
だが、訳はわかっている。
あの老人の占いを聞いたからだ。
老人は私に言った。
――お前さんは文官向きじゃ。
私もその通りだと思う。
戦うよりは書物の研鑽や雑用をしている方が好きだからだ。
そのためにも『孫子』を学ぶように勧められた。
『孫子』が何なのか私は知らなかったが、都に行ってから読もうと決めた。
だが、老人はこうも言った。
――それと『剣術』をしなされ。
“――なぜ?――”
戦うのは嫌いな私になぜ『剣術』を勧めるのかわからなかった。
『剣術』はやりたくない。
やるなら馬の乗り方を学びたい。
せっかく、馬に乗っているのだから。
――ただ、心のどこかでは諦めていた。
生まれてきた世の中が許さないだろう。
今は戦の世。
戦う術を知らなければ生き残れない。
馬だけでは戦えない。
――だから、私は剣を持つ。
自らの意思とは関係なく。
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