第2話 占い師 D
パカランパカラン……
「しかし、『隠れる』、『隙をついて逃げる』じゃったが、これほど面白い展開になったのは見た事が……と、どこまで行く!?」
老人は笑みを浮かべ、顎髭をさすっていたが、
パカランパカラン……
私は老人を通り過ぎて走り去った。
「そこは止まる場面じゃろうが! 戻らんか!」
老人の指摘は最もだが、
「と、止まり方がわかりませぇん〜!」
涙目になりながら私はそう訴えかけた。
「――そういう事か……」
老人は私の答えを聞くと、再び顎髭をなで、
「ならば、馬のの腹を押さえながら手綱を引きなされ」
老人の声が聞こえた。
私は老人に言われた通り、馬の腹――子どもを身籠ってそうな大きく柔らかいお腹を両足で押さえ、ひっくり返りそうな勢いで手綱を引いた。
「ヒヒィーーン!」
ダンッ!
地鳴りのような着地と共に馬はようやく止まった。
馬も止まり、落ち着いた所で、
「わしは許劭と申す」
「私は……」
名乗ろうとする私を手で制し、
「待たれよ。わしはお前さんの名には興味はないし、知ってどうなるものではない」
そう言いながらも興味深そうに老人は私の顔を覗き込む。
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