第1話 旅立ち @
「美々(メイメイ)、いってらっしゃい!」
後ろで元気に手を振り、私を見送る妹。
私は朱(シュ)家の毘(ビ)、字は英美(エイメイ)だが、妹は私の事を美々(メイメイ)と呼ぶ。
こんな妹も今日で最後だが、私はそんな妹を見て、腹立だしかった。
“……気楽に言わないで……”
別に妹が悪い訳ではない。
私が朱家の長女に生まれた事と時代のためにこうなった。
『…………』
妹の隣に立つ両親はこの意味を知るため、断腸の思いで、
「――行ってきなさい」
「体に気をつけるのよ」
できる事ならば引き止めたいのだろうが、今の世の中が、それを許さない。
私が生まれたのは戦の世。
この時代に生まれた者は男も女も戦に駆り出される。
父は体を壊し、母は戦えるような力も無ければ、知恵もない。
妹は幼いため、兵役を免れた。
この家で戦う術を持つ若者がたまたま私だった。
何が悪い訳ではない。
――これは仕方のない事だった。
「行って参ります」
両親と妹に別れを告げ、私は旅立った。
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