第2話 周喩 〜助言者〜 @
「カットダウンッ!」
孫策さんの攻撃が決まり、ウェイズドッグ1体を倒した。
「クイックスウェイッ!」
そして、最後の1体をボクが倒した。
それで、『街道の清掃』という要請は達成された。
あとは倒した証拠となるウェイズドッグの肉――『野犬の肉』をアラセマ駐屯所へ持っていくだけだ。
しかし、
「ちょっとスリむいたぁ〜!」
泣き出しそうな顔で、そう言ったのは孫策さん。
「……それで?……」
実際、彼女の腕にはウェイズドッグに引っ掛かられた、と思われるスリ傷が出来ていた。
だが、傷自体は小さい。
ほっといても治りそうなので、ボクは無視した。
「イタイよッ! イタイよぉ〜!」
孫策さんは泣き出した。
ボクは苛立ちを覚えたが、懐から傷薬を取り出し、
「はい」
「え? いいんですか!? ……うわぁ、ありがとうッ!」
孫酢さんに渡した。
孫策は傷薬を受け取ると、大いに喜び、さっそく、スリ傷に受け取ったばかりの傷薬をつけた。
傷はあっという間に治った。
「治った!」
「……さいですか……」
孫策さんはいぶかしげな顔をし、
「どうしました、REYさん?」
「……どうしたも、こうしたもないよ……」
「REYさん、こわいぃ〜」
振り返ったボクの顔がそんなに怖かったのか、孫策さんは半分、涙目になっていた。
「……冒険を始めたばかりだよ。ただでさえ、装備にお金が掛かるのに、スリ傷程度で、傷薬つかっていると、この先、いくらお金があっても足りないよッ! その点、わかっているの?」
そう、所持金が心もとないのに、無理して傷薬を買っても、モンスターと戦う度に使っているので、消耗品費がかさみ、ボクのサイフは火の車。
孫策さんはいくら持っているか知らないけど、財政はボクと大して変わらないだろう。
――回復はお金が掛かる。
「……ホントに僧侶の一人や二人入れないと、この先やっていけないよ……」
「僧侶?」
「回復専門の人のコト」
答えなんて、期待してなかった。
「それなら、いい人がいますッ!」
だが、帰ってきた答えは幸先のいい話だった。
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