プロローグ 〜依頼人〜
「知り合いが多いんでね」
親しみのある笑顔で、そう言ったのは旅人風の男だった。
名はオリオール。歳は二十代から三十代前後。
笑っているが、その奥に潜む鋭い眼光をボクは見逃さなかった。
“――旅慣れしている――”
それもかなりの修羅場を潜り抜けているだろう。
「……ボクにナニか御用ですか?」
淡々とした調子でボクはそう訪ねた。
オリオールが言うように、知り合いに頼んで、彼はボクを牢屋から出してくれた。
“……予測はつくが、一体、なんなんだか……”
あまり、この人に何かしらの情報を与えたくない。
――ナンとなく、油断できない相手だから。
「いや、なに。近頃、物騒だからさ、この先の町――ラースナウアまで護衛が欲しくてさ」
「――つまり、貴方の護衛をするか、牢屋に戻るか、どちらか選べ、と?」
オリオールが笑った。
「悪い話じゃないと思うよ。依頼料はちゃんと払うし」
“選択の余地なし、か”
ボクはオリオールの依頼を受けるコトにした。
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