第2話 周喩 〜助言者〜 A 「……どう言ったらいいのかな? ……」 「なにがですか?」 「……この状況……」 孫策さんはきょとんとしているが、他人目から見ると、ボク達は奇妙な組合せかもしれない。 ――特に、孫策さんが連れてきた人なんて。 「こんちわ」 僧侶は軽く手をあげ、軽快な挨拶をするが、 「………………」 「なんかしゃべってよ」 「そうですよ! 初対面の人にそれは失礼ですよ」 「………………」 「REYさん!」 孫策さんが少し、ムッとした顔をしたので、ボクはようやく口を開いた。 「……だって、どう言えばいいの、この状況? ……」 「だから、なにがですか?」 「……だって――」 ボクはビシッと僧侶を指差し、 「ナニ、その“連行してきました”と言わんばかりの姿ッ! それじゃあ、お尋ね者を捕まえた衛兵じゃないのッ!?」 「そう見えます?」 疑問符を浮かべた孫策さんに、 「見えるから仕方ないでしょう」 鋭いツッコミを入れるボク。 「はははは」 自分のコトなのに、僧侶はそんなボク達を見て、笑っていた。 “大体、コイツ、自分の置かれている状況、わかってんのか?” 僧侶は男だったが、その大の男が女に縄でぐるぐる巻きにされて、引き回されているのだ。 これを見ている100人が100人共、ボク達がナンの集まりなのか疑問に思うだろう。 ボクも最初にこの光景を見た時は、 “場所と人を間違えたか?” と本気で思ったほどだ。 「だって、周喩さん、すばしっこいので、こうでもしないと、どっか行くんですよ!」 口を尖らせ、そんなコトを言う孫策さん。 「ごめんね。どうも前が盗賊だったからクセでさ」 「――ちょっと待てッ!」 「?」 二人がボクを見る。 ボクは再び、僧侶を指指し、 「コイツ、周喩って言うの?」 「ですよ」 “ナニ、当然のコトを聞くんですか?” という言葉が聞こえてきそうな顔をする孫策さんに、 「……まず、そっから説明して……」 ボクは額に手をあて、疲れた調子で、そう言った。 [*前へ][次へ#] |