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SADISTIC EMOTION
†††



STAGE1


葉子の写真集発売から二ヶ月後。

相変わらず適度に仕事をこなしては暮らしている結城に写真集の発売元から連絡が入った。

ビジネスの話で、会わせたい人間がいる、とのことだった。


指定されたホテルのラウンジに向かうと、何度か顔を合わせた人間が結城を手招きする。


「あ、先生!ここです、ここ。」


若い年齢なのは一目瞭然の結城が足を踏み入れた途端に、スーツの中年に先生と呼ばれる訳だから、当然、周囲から好奇の目で見られる。


「溝口さん、それ止めてよ…恥ずかしいだろ?」

「いやいや、先生は先生でしょう。」


笑いながら声を掛けてくるのは同席の中年。

最初に結城を呼んだ溝口は写真集の編集者で、何度も結城に仕事を持ち込んでくれた人だ。
主にプロダクションやなんかと橋渡ししてくれるのはこの人で、SM系の企画があがると結城に声を掛けてくれる、有り難い人。


揶揄うように声を掛けてきた一緒にいる男は、金河といって葉子が所属するプロダクションの社員。
葉子のみならず、他にも色々と女優を抱えているので結城と接点は多い。


もう一人、サングラスをかけた怪しげな男が居るが、そちらに結城の心当たりはない。
どこかで見たような気もするが、はっきりとは思い出せない。

金河がサングラスの男に結城を紹介する。


「真川君、こちらが結城灯成先生。」

「初めまして。」


低めの甘い声と共に差し出された手を握り返しながら、結城ははた、と気付く。


(あ、こいつ…俳優の真川隆盛じゃん。)


真川隆盛(サナカワ リュウセイ)
28歳。最近、頭角を表し始めた実力派俳優。
やや怖面とは裏腹の甘い声と均整のとれた体躯で、エロカッコイイ、と女性に人気だ。


「どーも。ご活躍はテレビで。」

「いえ、若輩者でお恥ずかしい。」


当たり障りの無い挨拶を済ませると、軽く酒を交えつつ、緩やかな談笑。

注意深く結城が観察していると、どうやらこの会合を仕組んだのは溝口と金河で、招かれたのが自分。
真川と引き合わせるのが目的だったようだ。


「本題に入りましょう、結城先生。」

「だから、先生止めて。」

「避けないで本題、聞いて下さいよー。」


まぜっ返す結城に溝口が情けない顔を作る。
勿論、わざとだろうが。


「はいはい、聞きましょ」

「実は、お願いがありまして。」


切り出しにくそうな溝口と金河の様子に、結城はのんびりと構えた。









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あきゅろす。
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