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SPIRIT OF MASTER
†††



その街に子供達の笑い声はない。とうの昔に消えてしまった。

泣き声もない。
喧嘩の声も。


その街からはさざめく喧騒だけが、揺れるように届くだけ。





十歳になったばかりのケイは、この街に越して来たばかりだ。

すぐに馴染める、と朗らかで人当たりが良いと言われていたケイは思っていたがスクールに入って驚いた。


クラスメート達は皆、静まり返って誰もケイに何の感情も示さない。

興味深く見たり、くすくす笑ったり、そんなことがあって当然なのに、休み時間になってもケイに話し掛けてくる子はいなかった。



気味が悪い。


父親に訴えたケイは、困ったような父の顔に、首を傾げた。


『皆、病気なんだそうだ』


その言葉に、ケイは納得した。
父は医者だから、その為にこの街に来たのだ、と。






仮住まいの病院兼自宅の、二階のベランダからケイは街を眺める。

それが、このところのケイの日課になった。


公園に子供の姿はない。

時折、親に遊んでこいと言われた子供達が、ぼんやりと歩いているくらいで。

ケイの好きなバスケットに、付き合ってくれそうにはなかった。


感情を無くした、というより、表情を無くした、という感じだ、とケイは思う。

話し掛ければ返答はある。
根気よく話せば、考え方や個性の違いが分かる。
小さいが、怒っていたり、悲しんでいたり、喜んでいたりするのが分かる。



治療方法が見つかるまで、ケイは元の町には帰れないのだから、と、ゆっくり観察すると友達を作ることにした。






皆、冷たい瞳をして、同じように見える。

運動も勉強も出来るのに、自分からは動かないように見える。

大人は心配しているし、治そうと頑張っているみたいだ。

出来ればウチの子には、なって欲しくないと、どの親も言っているが『ある日突然』発病するのだそうだ。


感染経路どころか、症状もよく判らないという病気。




いつか自分もかかるのだろうか?



ケイはぼんやり呟いた。









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