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SPIRIT OF MASTER
†††



『低迷の砂』








扉は見えない
先は真っ暗で怖い


そっちには行けないよ
どうしてみんな
当たり前みたいに進めるの

嫌だよ

見えない
怖いよ


どうして
どうして
私だけ

ここから進めないの









穏やかに差し込む木漏れ日は春。
暖かな熱を含んだ光りが、そっと肩を温める。

今年度、私は長く学んだこの学校で、最後の一年間を迎えた。
卒業までの一年間を、大切に過ごすように先生が言ったが、私達にはよく解らなかった。

新しい学年、先輩のいない校舎、同じクラスになった好きな人。
そのどれもが、私達を浮つかせていて。
大切に、なんてピンとこなかったのだ。



「ねぇねぇ、花音(かのん)、魔法構築学、取った?」

「うん。あと、精霊法律学と色彩雅楽と亜人心理学B、は決めた」

「明日、進路指導だって。面倒臭いねぇ」

「そうだね〜……」



入学して以来の親友、麗奈(れな)は魔法力学に強い色白栗毛美人。
彼女の隣を歩くのは、最初の頃こそ勇気がいった。
今では開き直っているけれど。
なんでも話せるし、どこに行くのも麗奈となら楽しい。



「おはよ、何の話してるのー?」

「おはよー、夕海(ゆうみ)」

「おはよ。夕は講義、何取った?」

「魔法構築学とー」

「一緒、一緒〜!」



夕海は去年、同じ講義で仲良くなった。少しスレた金髪美人。
気のキツめな印象から怖いのかと思ったら、講義が同じだというだけで手を取り合って跳ねてくれる可愛い子。





私達はいつも基本的には三人で。
夕海の彼氏の天将(たかまさ)とその友達の淳騎(あつき)が混じることもあるけど、そんな時は私を含め五人で行動する。

仲良しグループが同じクラスというので、進級からずっと私達は浮かれている。


今日は授業を選択して希望を提出する為、どの子達もその話題で持ち切りなんだ。
単位と秤にかけつつ、いかに仲良い友達と合わせるか、毎年ドキドキする。


加えて、明日、進路指導がある。
将来を決める為の調査と指導。
そんな話題もあがってる。



教室に元気な挨拶を繰り返しながら、天将と淳騎が入ってきた。

天将はちょっと軽くてお調子者、淳騎は真面目なタイプで、何故友達なんだろうなんていつも思う。



「なぁなぁ、進路決めた〜?」



天将の呑気な声に私は首を振る。


けれど。






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あきゅろす。
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