SPIRIT OF MASTER
†††
小さな芽はすぐに私の身長と並んで追い抜いた。
グランドのゴムにびしばしヒビが入っていく。
やがて私より太い根っこがゴムの大地を持ち上げて、大きくうねらせた。
どんどん、大きくなる。
学校の校舎が崩れ始めた。
根っこに持ち上げられて、木の幹に押し付けられて、ガラガラと崩壊していく。
小さかった芽は、グランドいっぱいに幹を育てて、そこら全部を日陰にした。
地中では、根が這いまわっているんだろう。地震のようにグラグラと揺れてる。
その場にいたら危ない、と私は避難するように街に駆け出した。
途中、露出してる根っこに足を取られながらも、出てみた街は。
あちこちの道路を突き破って現れた根っこに大パニックだった。
騒ぎの原因を知ってるのは、私だけ。
それが可笑しくて可笑しくて、私だけが笑っていた。
あのパニックから一年が過ぎ、二年が過ぎ、五年が過ぎた。
壊れた物を次から次に撤去したら膨大なゴミになった。
そうか、私達はゴミの中で生活してたんだ。
今あの不思議な植物をどうするべきか、政治家が討論してるけど。
多分、どうにも出来ないんだろうな。
露出した土は電線のない空の下でお日様の匂いを放っている。
小さな雑草やなんかが、ちょこちょこある。
私は土の茶色でできた庭に面した部屋で外を眺める。
庭の真ん中には、青空を映す水溜まりができていた。
Fin
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