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SPIRIT OF MASTER
†††




私はなんで出来てるのか、時々、分からなくなる。

そこらにいる動物はみんな、人が生み出したもの。

私がそうじゃないと、誰が証明できる?


傷つけば赤い血液が流れ、確かに鼓動は脈打つけど。

それすら作りものだったら、と思うと怖い。

逆に皆がそうじゃないと、誰が証明できる?

私だけが、人間だったらどうしよう?



私はナニ?
貴方はナニ?

この世界は
何で出来てるの?


怖いよ。







学校が終わっても、私は帰る気にならなくて、ぼんやりゴムで出来たグランドを眺めていた。

気付くと、隣に小さな男の子が座っている。

見たことがない子だ。
黒髪に黒衣、瞳は深い蒼。



彼は黙って握った手を私に差し出した。

手の平をその下に差し出すと、ころんと丸い物をその上に置いた。
標本で見た、クルミみたいだ。

どうやら、この木の実を私にくれるみたい。

しげしげと眺めて、顔をあげると男の子はいなかった。

一言も言葉を交わさないまま、彼は消えてしまった。








これはなんだろう?

木の実だとは思う。
けど、種なんて博物館にしか残ってない。
レプリカの玩具だろうか?


なんだか可笑しくて、私はそれを握りしめた。


埋めて、あげよう。

土に。






確か、生物室に瓶に入った土があったはず。

このゴムだのコンクリートだので覆われた下には、これがあるんだと先生が見せてくれたことがあった。

茶色くて、不揃いで、変な匂いがした。
あれが大地の一部だというなら。




生物室に入り込んで、準備室の扉を開く。

私は辺りを確認すると、土の入った瓶を持ち出した。
それは何故だか、凄く重かった。


見つかったら怒られるかな?

その時はその時でいいや。


グランドに戻ると瓶を置いて、中に小さな種を埋め込んだ。

どうなるだろう。

芽がでるだろうか?

沢山、時間がかかるだろうか?




予想に反して、土が盛り上がり、小さな芽がでた。


これが、自然な植物、なんだ?


それは瓶を突き破り、ゴムの地面に根を突き立てると、みるみるうちに育っていく。








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あきゅろす。
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