SPIRIT OF MASTER ††† 漆黒の夜の館。 精霊王の居住の一室で丁寧に伯爵の燕尾服にブラシを掛けながら、執事服に身を包んだシャ・リオンはくすり、と笑みを零した。 「…どうかしたのかい?」 「いいえ。」 テーブルに用意されたお茶菓子に手を伸ばしながら伯爵が尋ねる。 あの街では。 その後、目覚ましいスピードで子供達の病気が治ったらしい。 ケイ、…ケイト・リーズが父親にあったことを全て、話して聞かせたからだ。 彼女はその街で成長し、結婚して子供を産んだ。 愛していると伝えながら、大切に育てただろう。 ケイトだけでなく、あの街の子供達は皆。 愛することを、それを伝えることを、怠らなかっただろう。 いつまでも、子供達の笑い声の絶えない街として、今なお、語り継がれている伝説。 精霊王の深い愛情と、消えた少年の話。 「シン…。シャ・リオン…?ボク、お代わりが欲しいんだけどな?」 「あ、はい。ただいま。」 親の愛情とは無縁だった孤児のシンは、病気にはかからなかった。 今は伯爵の元で、世界中を愛している。 Fin [BACK] [戻る] |