Celluloid Summer
†††
エピローグ
街角にアンティークな喫茶店がある。
店名は『Black Cafe』
馴染み客には『BC』との略称で親しまれるこの喫茶店は、喧騒の外れにひっそりと佇んでいた。
近場には公園もあり『BC』でサンドイッチなどをテイクアウトして、のんびり過ごすのもお薦めだ。
今日も店員が優雅に会釈し一時の心休まる空間を演出する。
夏の間、盛況したアイスメニューも、ゆっくりと秋の味覚へと差し替えられていき、季節が変わろうとしているのを客達に思い出させる。
何度目かの秋に変わらない日常。
それでも確かに変わったものもある。
開店準備に向けて、店のデザインやメニューを考案している春日。
仕事の時間を減らし、劇団に通い始めた咲遊音。
時折だが、笑顔を見せるようになった那智。
凪遊音や冬月が『BC』に出入りすることが増え。
最近では鞆親が結婚資金を貯めている。
相変わらずのタクミは店員の指示出しや事務処理と忙しく。
変わらずに微笑を浮かべたマスターはカウンターで店員を揶揄かい、コーヒーを入れる。
絋羽と紅羽は交互に店に出ているし。
空近はカウンターの一角に一日中座っている。
些細な日々の喜びを。
噛み締めるように大切にしながら、そこにいる全員が『BC』にいられることを誇りに思っている。
穏やかに過ぎる日々は、不変では到底ないけれど。
変わっていく日々が確かな成長と喜びなら。
それもまた、一つの物語。
「いらっしゃいませ!」
ENDLESS
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!