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Celluloid Summer
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ホテルの喫茶店でメニューや店員の態度、サービス内容にチェックを入れていたタクミは前に座る人物に視線を向けた。


「やっぱり、行き届いていて凄いね。」


白い陶器製のカップを持ち上げながら、タクミが微笑する。


「ですね。」


言葉少なに返したのは、絋羽だ。
生真面目な二人が必ずチェックを入れるのは飲食店。
チーフとチーフ代理として『BC』の為になることには労力を惜しまない。


「そういえば、タクミさんは旧『BC』のマスターをご存知なんですよね?」


絋羽がカップを掻き混ぜながら問うと、タクミは僅かに頷いた。


「俺と瑞希さんと…チカくらいかな?咲遊音も知ってるか。」


懐かしむようにタクミの瞳が細められる。


「…どんな人でした?」


絋羽は何気なく続ける。
前からタクミが瑞希を『マスター』と呼ばないことに疑問を持っていた。
瑞希に尋ねたところ、出てきたのが旧『BC』マスターの話だった。

家出同然の瑞希とタクミを拾い、多大な影響を及ぼした老紳士だという。


「…どんな人、か…難しいな…強いて言うなら、穏やかで、子供みたいな人だったよ。」


瞳の綺麗な人だった。
色々な人生経験を交えた話は聞く者をひきつけた。


「…あの人みたいに、なりたいんだろうな、瑞希さんは。」


タクミが呟いた言葉の暖かさに絋羽も微笑した。


「タクミさんは?」


どんな人になりたいのか、絋羽には興味があったらしい。
瑞希を影ながら支え、細やかな気配りをするタクミはある意味絋羽には憧れでもある。


「そうだね…今のまま…幸せだと感じれる、自分でありたいよ。」


空になったカップをソーサーに戻しながら、タクミは幸せそうに笑った。


「絋羽の夢は、何?」


タクミの問いに、絋羽は複雑な微笑を浮かべる。
先の未来など、見えてこない。
絋羽にはまだ時間が必要だと思われた。


「…さあ…いつか、見つけたい、ですね…」


絋羽の答えに、タクミは少し考えて口を開く。


「それも、いいんじゃないかな?…夢なんて、無理して作るものじゃないし。」


微かに首を傾げたタクミの言葉に、絋羽は穏やかに笑った。






午後から観光名所を巡り思い出の写真は増えていく。
古びた寺院。
整備された博物館。
景色のよい展望台。
食事の美味しいレストランに、賑わう界隈。

夏の日差しに疲れたら、公園の木陰で休んだり。

楽しい旅行が時間を加速させて、日程を消化させていく。







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あきゅろす。
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