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Celluloid Summer
†††



緊張の糸が切れた那智は、数日間の不摂生がたたって深い眠りに落ちた。

夢の中で、何度も罪を犯す那智。

その度に更に深みへと落ちていく。

けれど、目が覚める瞬間に奏の笑顔を見た気がした。


「おはよう。…よく眠れた…?」


泣き腫らした目蓋は思うように開かなかったが、那智は咲遊音を見上げる。

あのまま眠ってしまったことに気が付くと那智は慌てて体を起こす。


「…今、何時…?」


恐る恐る尋ねた那智に咲遊音は笑った。
さすがに抱き合ったままの体勢では那智も辛いだろうと、横抱きにした咲遊音は那智が起きるのを待っていた。


「もう、夕方。お腹すいた?那智。」

「っ…ごめ…寝ちゃった…っ…」

「いいよ。この所、寝てなかったろ?…待ってて、今何か作るから。」


焦る那智から手を解いて、そっとソファーに降ろすと咲遊音はキッチンに向かい、オレンジジュースを入れたグラスを持って戻ってきた。

那智に手渡しながら、咲遊音は那智の頬に触れる。


「ねえ、那智。なかったことには出来ないけど…奏はきっと怒ってない。それに那智は悪くない。…何もわからなかったんだから。」


咲遊音の言葉は温かく。
けれど、那智は認めるわけにもいかない。


「悪くないなんて、ないよ…けど…生きてく…償う方法を、探しながら…」


そう、決めた。
彼女にも、咲遊音にも。

そんな方法はないのかもしれない。

それでも、諦めない。

一生をかけて、償わなければいけない。

那智の心のままに。


「じゃ、ゆっくり二人で探そう。結論は急がなくていいんだよ、きっと。」


守り切れなかったと何度も自分を責めた咲遊音。
犯した罪に苦しむ那智。

けれど、二人なら。

逃げることを止め、過去を受けとめた二人なら。


背負った十字架に潰されずに歩けるだろう。

そんな気がした。



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