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Celluloid Summer
†††


ACT.1


就業後、改めて店員に咲遊音が紹介された。

今日、休みだった店員もいる。

新しい従業員が入るときはそうして皆に紹介されるのは『BC』の慣わしになっていた。


「如月 咲遊音。俺の甥にあたる。主には寮管理と、ウエイターのヘルプだ。」

「よろしくお願いしまっすっ!!」


瑞希の紹介に、柔らかな茶髪を揺らして咲遊音が勢い良く頭を下げる。


「で、咲遊音。知ってると思うがこっちがチーフの、白兎 タクミ。わからないことはタクに尋け。」


瑞希の紹介に、僅かに会釈したのは唯一の白い制服に身を包んだ、金髪に近い茶髪の青年。


「久しぶり、咲遊音君。」

「ご無沙汰してます〜。」

「うん。これからよろしくね。」


簡単な挨拶に、加わる握手で笑いあう二人。

長期の従業員であるタクミは昔、咲遊音に会ったことがある。
というよりも、『BC』開店前から瑞希とつるんでいるタクミは、彼が可愛がっている甥っ子と顔馴染みだ。


「隣が、パティシエの砂田春日。うちの紅一点だ。」

小柄で周りに埋もれていた春日が、ひょこん、と頭を下げる。


「改めまして。よろしくね〜、咲遊音ちゃん!」

「や、こちらこそ、よろしくね、春日ちゃん。」


ぶんぶんと手を握って上下に振り、にこにこしているのを見る限り、休憩中にかなり親しくなったらしい。


「それから、同じパティシエの、宮守 紅羽。」


春日の隣、丸サングラスの青年が、真意の見えにくい笑顔で優雅に腰を折る。


「初めまして。紅羽でいいよ。今日はいないけど、兄の絋羽もよろしくな。」

「はい!よろしくお願いいたします!」


絋羽はチーフ代理もこなすパティシエで、紅羽と正反対だから、と瑞希が付け加える。


「五十嵐 鞆親。ウエイター。」


『BC』メンバーで一番長身の男が頭を下げた。


「うわ〜…背ぇ高いね〜!身長いくつ?!」

「193です。」


笑顔も愛想もないが、どこか憎めない雰囲気がある鞆親は、威圧感はあるものの咲遊音には可愛い。

タクミより後だが鞆親も幼少から瑞希と一緒にいる。
メンバーの中では、一番長身だが、一番年下でもある彼は、実はまだ高校生だ。


「それから、ウエイターの木島 那智。お前の同室者だ。仲良くやれよ?」

「あ、同室って君だったんだ。よろしく〜!」


咲遊音に全開の笑顔を向けられても、那智はしれり、としたままだ。

本人はそのつもりはないのだが、さっき挨拶したからまぁいっか程度の態度は、実は凄く印象が悪い。

咲遊音は気にした様子はないが。


「それから、紹介するまでもないが、片山 空近。」

「あ、空近さん!これからもよろしくお願いいたします。」


何故か、従業員でないにもかかわらず、空近は寮で暮らしている。

キツメの目元をふと和ませて、微笑する空近とも、咲遊音は顔馴染みのようだ。


「他に、バイトで不定期に入るメンバーが数人いるが、まあ、近いうちに逢うだろ。じゃ、今日はこれで解散。明日は定休だから、ゆっくり休んでくれ。」


瑞希の言葉に、それぞれが散っていく。
夜7時閉店から一時間。そこからが、各員のくつろぎの時間だ。






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