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Celluloid Summer
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ACT.3


「いらっしゃいませ。」


店員の優雅な挨拶が『BC』店内に通る。

まず客を出迎えるのは、那智か絋羽、タクミだ。

席に案内して、下がると紅羽か咲遊音、あるいは春日がオーダーを取りにくる。

品物を運んでくるのはまちまちで、店員の入れ代わり立ち代わりが面倒だ、と言う人にはお薦めできないが、すべてが担当のテーブルだと思えば、自然と気が引き締まるらしい。

誰かのミスは誰かがフォローする。

チームワークが出来ていないと粗雑な印象をお客に与えるため、店員同士のコミニュケーションは大切だと瑞希は考えているらしい。

ゆえに、店員の誕生日をみんなで祝ったり、食事会や飲み会、旅行などがあったりもする。


その日、閉店後のミーティングで話題にあがったのは旅行の話だった。

もちろん、ただの慰安旅行なわけではない。

パティシエの面々には料理の、ウエイターの面々には接客の勉強の為。

とは表向きで、やはり、ただの慰安旅行かもしれないが。


店の店休日と前後を合わせて3日間の旅行日程の予定で、都合のよい日を合わせていた時だ。


「あっ…すいません…その日は…」


異を唱えたのは春日。
申し訳なさそうに、手を挙げて頭を下げる。


「ダメか?」

「はい…その日は弟の誕生日で…一緒に居たいので…。すいません…。」


瑞希の問い掛けに、春日が述べた理由は、家族の為。


「いや、気にするな。じゃ、もう一週延ばして…二ヵ月後になるが、いいか?」

それには今度こそ反対はなかった。


ミーティング後、散っていく店員の中で、春日に話し掛けたのは咲遊音だ。


「春日ちゃん、弟、いるんだ〜。」

「うん。もうおっきいんだけどねえ。うち、両親が共働きだから、彼女作るまではお姉ちゃんがお祝いしてあげないと。」

「へえ。優しいんだね。ウチも弟いるよ。中学生でさ、生意気なんだけどね。」

「ウチは高2〜。生意気だよね〜。」


きゃいきゃいと弟話で盛り上がる二人は、端から見ていて微笑ましい。

微笑ましいが、戸締まりをしなければ帰れないタクミにしてみれば、追い出しにかかるしかなく。


「二人とも、そろそろ閉めたいんだけどな?」


タクミの言葉に二人は慌てて裏口を潜る。

マンションの裏口から入ったところで、春日も一緒なことに気が付いて、咲遊音が問い掛けようとすると、後ろから首に腕がかけられた。


「わっ!?」


ホールドして引き寄せたのは瑞希で、咲遊音の首を絞めるように引き止めつつ、皆が部屋へ戻る様子を眺めた。


「苦し…」

「あんま、野暮なこと聞くなよ?咲遊音。」


咲遊音を解放して瑞希が笑う。
瑞希の隣にいるタクミが、ちょいちょいと指差した先には。

鞆親の袖をつい、と摘んでついていく春日の姿。






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あきゅろす。
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