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Celluloid Summer
†††



笑いの発作を耐えている那智の、ひとしきりの衝動が納まった頃に、咲遊音は那智の顔を覗き込む。


「非道いな。そこまで笑うことないだろ?」


むぅ、と拗ねたように那智を見る咲遊音に、息も絶え絶えに訴える。


「…ち…ちが…違うっ、………なの。」


笑い声に邪魔されながら、目元の涙を拭いつつ、那智は片手で自分を抱き締めるようにしゃがみこんだ。

見下ろす咲遊音を上目遣いで見上げながら、聞き取れなかったらしい咲遊音に、同じ台詞を今度ははっきりと言ってみせた。


「違う。俺もなの。」


少し恥ずかしそうに告白する那智に、今度は咲遊音が目線を合わせるためにしゃがみこむ。


「…一緒?」

「うん。明るくないと眠れないんだ。」

「…そうなんだ。」

「ん。びっくりした。」


パジャマの袖口で口元を隠しながら、くすくすと那智が笑う。

額をぶつけそうな距離で、咲遊音もまた笑った。

子供っぽいんじゃないかと、二人とも人にはなかなか言えなかった癖。

思わぬところで同志を見つけて、少しだけ人より近い気がした。






翌日が休みなのもあって、すっかり目が覚めてしまった二人は、そのまま深夜の宴会へと傾れ込んだ。

といっても、急なためにビールくらいしかない。


「で、なんで咲遊音は電気つけてないと眠れない?」

「うーん…暗いのが恐いじゃない?子供の頃って。そっから、癖になったみたいでさ。」

「そっか。」

「那智は?」


グラスにビールを注ぎながら咲遊音が尋ねると、那智は少し考え込むように答える。


「…恐い夢を見るから、かなぁ。」


部屋が暗いと嫌な夢をよく見るんだ、と那智が言うと咲遊音は、わかる、と頷いた。


「あとさ、お風呂入ってる時に、背後が気になったりしない?」


咲遊音の提示に、今度は那智が頷いた。


「気になるよねぇ。後は枕が変わったら寝れない。」

「そうそう、寝れないんだよね〜。」


何度も頷く咲遊音に、アルコールの勢いもあってか那智もよく話した。

好きなものや嫌いなもの、小さい頃の恐いもの、苦手だった教科など。

同居人から仲間へと意識を変える酒宴は、朝まで続いた。




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